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プレスリリース

「甲状腺疾患入院患者さんの急変事例について」の記者会見

「甲状腺疾患入院患者さんの急変事例について」の記者会見を行いました。
概要については以下の記者会見で配布した資料のとおりです。

平成21年 3月18日
京都大学医学部附属病院
記者会見配布資料

甲状腺疾患入院患者さんの急変事例について

1.昨年9月に耳鼻咽喉科にて甲状腺疾患で手術を受けた患者さん(80歳代女性・京都市内在住)に気道狭窄症状が出現したため、12月23日再入院となり、夜間はパルスオキシメーター(経皮的酸素飽和度測定器)による持続的な酸素飽和度のモニターによる容態観察が行われていました。

2.1月5日未明、患者さんがベッド上で心肺停止状態となっているのを看護師が発見し、直ちに当直医師らにより緊急蘇生術が施行されたが回復されず、2時08分に死亡が確認され4時50分退院されました。

3.朝になり出勤してきた病棟師長らが急変時の記録や申し送りなどを整理したところ、準夜勤帯の看護師がパルスオキシメーター(※1)のナースステーション側の電波受信を一時退室モード(※2)にしており、その後に患者が急変していたことを確認しました。この事実がご遺族に報告されないまま退院となったことから、

4.同日、直ちにご遺族と連絡をとり、医療安全管理担当副病院長が改めて事実経緯を説明しお詫びしたところ、ご遺族は詳細な事実確認と原因究明および日を改めての結果報告を要望されました。

5.これを受け病院は、当時の診療に関与した職員や診療記録などから情報を収集し、患者の死亡時の経緯についての詳細な調査を行い、3月3日にご遺族に対して調査結果を報告するとともに改善策等についても説明しました。

6.調査結果と改善策の概要は次のとおりです。

調査結果のまとめ

当事例は急速な甲状腺疾患の再発によると思われる気道狭窄と呼吸困難をきたしつつあった患者が、その原因精査と呼吸管理目的にて入院していたところ、気道閉塞により死亡したものと考えられた。主治医団は近い将来、気道確保のための処置が必要となる可能性があると考えていたが、病理診断結果が出てから待機的に行うこととし、それまでは夜間パルスオキシメーターによる酸素飽和度の持続モニタリングを指示し、慎重に経過を観察していく方針とした。

急変直前、担当看護師はパルスオキシメーターの持続モニターを中止していた。これは担当看護師が、不眠に苦しんでいた患者をできるだけ覚醒させないように看護しようと配慮した結果、酸素飽和度の持続的なモニターにこだわるのではなく、断続的にベッドサイドで測定していけばよいと判断したことによる。当患者は呼吸状態が不安定であるがゆえに入院下で過ごすよう指示されていたのであり、特に夜間は急変などにも迅速に対応できるようパルスオキシメーターによる持続モニターの指示が医師から出されていた。当看護師は持続モニターを中止するのであれば、当直医師か主治医の許可を得てから行うべきであった。

当事例発生時、深夜帯と準夜帯を挟み2人の担当看護師以外に6人の看護師が関与していた。6人の看護師はそれぞれが自身の業務をしており、基本的に当患者の管理は担当看護師に委ねられていた。当病棟では特にモニター管理全般についての注意喚起はされていたものの、主に担当看護師による受け持ち患者への確認に重きが置かれており、モニター装着患者に関するチーム内の、あるいはチームを横断した情報共有体制、サポート体制が有効に機能していなかった。

病棟スタッフ、救急医師らにより施された救命措置は適切であったが、患者を救命することはできなかった。担当看護師によりパルスオキシメーターの持続モニタリングが適切に実施されていれば、あるいはその他の看護師の注意により迅速にモニターの装着状況が是正されていれば当患者の異常の早期発見は可能であったと考えられた。

耳鼻咽喉科の主治医団は急変時のモニター状況・数値の変動記録等について十分に検証しないまま、ご遺族への説明を実施した。深夜帯看護師は、朝に出勤してくる担当看護師とともにあらためて正確な情報を得た上で病棟責任者(師長)に報告しようと判断したため、ご遺族に正確な事実経過が迅速に報告されない結果となってしまった。

改善策

京大病院看護部では当事例発生後、1月5日に緊急で全病棟師長を招集し監視装置必要時の確認事項を周知した。さらに「監視装置を必要とする場合の緊急対策」を新たに策定し、平成21年1月13日の定期師長会で配布した。翌1月14日には臨時に病棟看護部リスクマネージャーを招集し、周知した。この対策ではモニター監視を要する患者への管理として、担当看護師・各チームのリーダーの役割が明文化され、どの時点で誰が何を確認するかが定められた。

これに合わせ、耳鼻咽喉科病棟では平成19年11月に策定された「持続モニタリング装着基準」に加え、新たに「モニター装着時の確認」と「モニター装着時のチェックリスト」を策定し、部署内で周知した。モニター装着患者への具体的な確認方法・手順が定められた。

京大病院医療安全管理委員会は平成20年12月にインシデントレポート提出要項を改訂し、すでに周知を行っていたが、あらためて病院執行部会議・病院協議会・病院運営連絡委員会・病棟医長会議・外来医長会議・リスクマネージャー代表者会議にて周知しなおし、院内突然死発生時の報告体制等について京大病院内の全診療科・全部門に対して再指導を行った。

※1 パルスオキシメーター:指先に端子を装着し、毛細血管の血流から動脈血中の酸素飽和度を測定する機器。機器本体はベッド上に置かれ、酸素飽和度と脈波が表示される。本体は送信機の役割も果たし、ナースステーション内のセントラルモニターが電波を受信し、モニター画面に数値と波形が表示される。異常が検出された場合、機器本体(ベッド上)とセントラルモニター(ナースステーション)双方でアラームが鳴る。

※2 “一時退室”モード:検査や入浴などにより患者が一旦病室を離れ、送信機からの受信を必要としないときに用いる中断モードのこと。ナースステーション内のセントラルモニターに“一時退室”と表示され、波形は表示されず、アラームが鳴らなくなる。


会見平成21年3月18日に行われた記者会見の様子

左から
一山 智  副病院長
長尾 能雅    医療安全管理室長

説明パルスオキシメーターの説明の様子




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