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放射線科医の一日 | 片岡先生 | 梅岡先生 | 藪田先生 |

放射線科医の一日

片岡先生

 朝は5時には起きて、勉強や論文・原稿書きからスタートします。 3歳の息子が起きてくる7時までが自分の時間。7時からばたばたと朝食、支度をして保育園に送りとどけ、 8時半までには業務の場所にいられるよう自転車を走らせます。

 現在の業務は主にCT、MRI診断。CTは分野を問わずいろいろな部位の検査がどんどん進められていきます。 担当の技師さん、研修医、大学院生との共同作業なので、まずは撮影現場の方々にあいさつをすませ、 昨晩からの未所見画像をチェックしているうちに、どんどん新しい画像が送られてきます。 診断科にはローテートしてくる研修医の先生も多いので、書いてもらった仮所見をチェック・訂正するのも仕事の1つ。 当初は画像を前に茫然としていた研修医の先生も2か月もするとそれなりの読影ができるようになるのは、 指導する立場としても嬉しいものです。(2か月でやめちゃうのは、ほんと惜しいなあ。) 大学院の先生ともなると、分野によっては私よりも詳しかったりするので、逆に学ぶことも多々あります。

 一息ついたと思ったら、緊急検査の所見についての問い合わせの電話。 救急部や外科の先生方など、治療方針決定のために急いで読影が必要な場合、 わざわざ先生方が出向いてきてくださることもあり、一緒にモニターをみながら原因を探ったりもします。 何か役に立つ情報を提供できたときは診断医をやっていてよかったと思う瞬間です。

 診断業務とならんで勉強になると感じるのは院内の各種カンファレンス。 私は耳鼻科、乳腺外科の臨床のカンファレンスに参加しています。 臨床側の観点や他の検査・手術所見を知り、レポートでは伝えきれない情報を話し合う貴重な機会です。 加えて、乳腺外科・病理・放射線診断科で行っている症例検討会もあり、 画像でみえたもの、みえなかったもの等フィードバックを行う場となっています。 こうした臨床各科とのコミュニケションがあってこそ、診断医が成長できるのだと感じます。 また、産婦人科画像の Research meeting にも出ています。こちらは診断科のスタッフ・大学院生がおこなっています。 私は時間の関係で産婦人科の臨床カンファには出られないので、 症例を学ぶには欠かせない時間ですし、臨床での問題点を研究につなげるアイデアを練る良い機会です。

 これに、研究が加わるので、やることには事欠かないのですが、 たいていあっという間に息子の夕方お迎え時間。 心のなかで「お先にすみません」と言いながら6時50分にはか白衣を脱いで自転車で保育園にまっしぐら。 家にかえって洗濯・夕食・風呂。夫が早く帰ってきたときなど余力があれば息子の遊びにつきあい、 息子とともに10時には全員就寝。

 手先があまり器用でなく手技習得に手間取り研修医時代に苦労した私にとっては、 勉強することが診療の質の向上につながる放射線診断学は魅力的でした。 産婦人科や乳腺外科といった分野は、研修医時代に一度は選択を考えたものの、 上記の理由から断念したという経緯があり、 画像診断という異なる形ではあれ興味のあった臨床科(しかも、複数)にかかわっていけるというのは、 診断科の長所であり、やりがいだともいえます。

 好きなだけ自分のために時間を使うことができた若い頃と比較すると、 子育て中は仕事に費やす時間の減少は避けられません。 それでも職場の皆や夫・両親などの家族など多くの人の協力に支えられながら 仕事を続けていくことができているのは恵まれていると感じます。 子供の急な発熱・病気等で予定外に仕事を休まざるを得ないこともあります。 職場の方に迷惑をかけるのは大変申し訳なく、 それが続くと仕事を続ける意味について自問自答することも無きにしもあらずですが、 大変ありがたいことに現在当科では、 CT・MRI等の診断業務担当は優秀な医局長のおかげでシステマティックに管理され 代行の人を迅速に手配していただいているので仕事への影響も最小限でとどめられ、 優しい職場の皆のサポートのもと子育て中の私でもめげることなく 大学病院の第一線で仕事を続けることができています。

 忙しいとなかなか研究には十分な時間を割くことができませんが、 画像診断研究の多くは、診断・診療の質の向上を目指すものなので、 数年~10年後には自分の研究テーマが現場で使われるようになり、 臨床他科の先生や患者さんにとって役に立つものにつながればいいなあと思います。

 研究テーマの画像は大抵熱心にみることになるので、読影能力もアップするというオマケつき。 くわえて、画像の研究だと結果が「目に見えて」わかるのが、私にとっては楽しく感じる点なのかもしれません。

梅岡先生

 某月某日 とある放射線診断科医の日記より。
 今日は朝から○○科とのカンファレンス。しかし、外科医の朝は早い。 週一回6時半に家をでる生活も8年になるので慣れてはきたが、これが日常の外科医の先生には頭が下がる。 そんな先生方に必要とされているわけだから、こちらも身が引き締まるってものだ。
 7時半。カンファランスが始まる。ん、なに?他院から second opinion の謎の腎腫瘍?良性か悪性か、 次の一手など根拠をつけて説明・解説してみる。患者さんの運命の分岐点なので、慎重に慎重にと・・。 うん、上出来。カンファランスは興味深い症例に出会えるし、実際の臨床をそれとなく教えてもらえるし、 自分の成長には欠かせない場所なのだ。
 9時。カンファレンスも終わり。今日の朝は超音波検査。 CT, MRI も重要な画像診断ツールだけど、超音波は CT/MRI ではわからない情報を与えてくれる大事なツール。 それぞれの長所をちゃんと押さえておくとカンファレンスなんかで説明の幅がひろが・・お。PHS が鳴ってる。 「もしもし・・、前縦隔腫瘍? CT 見せてもらって、またお電話します。」 なになに、若いおにいちゃんのかなり大きな腫瘍だねえ。リンパ腫か、胚細胞腫瘍か、胸腺由来の腫瘍かってところかな。 均一なところを見ると、胚細胞腫瘍の可能性は低いかな。針を刺すルートはありそうだし、血管は近くにないし・・よし、電話だ。 「もしもし、前縦隔腫瘍ですが、超音波ガイド下で生検可能かと思います。 ◎曜日のお昼休みに病棟にお伺いしますので、よろしくお願いします。」 最小の侵襲性で、診断をつけてあげられると患者さんからも臨床の先生からも喜ばれるやりがいのある大事な手技。
 13時。午後は CT 当番。毎日大量の CT がやってくる。CT や MRI の画像をじっと見てみると、 その人の既往や人生そのものがカルテを見なくても見えるときがある。 なかなか趣き深い、深遠な作業だ。
さて、最初の患者さん。 ん?おなかに大量の出血があるじゃないか?カルテ・カルテ・・。貧血も進行しているねえ。 あら、肝腫瘤から造影剤が漏れてるわ。さ、主治医の先生に電話。 「肝腫瘍破裂してますよぉ。・・・・・ん、緊急 IVR で止めてほしい?」
 30分後。血管造影室。今日は IVR 当番だったので、血管造影で止血にかかる。 右鼠径部から細い管を動脈に入れて・・肝動脈にまですすめて・・造影!ああ、血管破れてるねえ。 では、破れているところまで管をすすめてと、止血剤を動注。止血後の造影で漏れないことを確認して、終了!。 お、血圧が回復してる。いい仕事したなあ。今日のビールは間違いなくおいしいぞ。
 17時。××科とのカンファランス。また、おもしろい症例を供覧できる。 先週の手術の結果・・・術前診断と大きくは外れてないな、よしよし。。
 18時。日中は忙しくても、比較的夜は時間があるのは放射線診断科の大きな特徴。 今日は、来月の学会発表の準備。国内・国外を問わず・・新しい知見を吸収して、 日常診療に応用・還元することで、臨床の先生方との良好な信頼関係を築けるので、 忙しくてもこれはと思う学会には演題を entry する。 頻度は人それぞれだけど、これは医者でありつづける限り royal duty だと思う。

 放射線診断医は Doctor's doctor という言葉で形容されることがあります。 放射線科医は臨床医にとってよき相談相手であり、パートナーでなくてはなりません。 そのために放射線科医は様々な modality (CT/MRI/超音波/核医/IVR) の特性と画像所見を理解し、 臨床も学ばなくてはなりません。はっきり言って地味な仕事/勉強は多いです。 ただ、「いい病院には、優秀な放射線科医/病理医が必ずいる」というのが私の持論で、 不可欠な診療科であり、やりがいのある仕事だと思います。 各診療科の世界では神と呼ばれるようなご高名な先生とも、 カンファレンスや学会・研究会では卒後早い段階から対等に discussion できます。 現在、医療も多様化がすすみ、画像診断に特化した医者のニーズも高まっています。 一風変わった診療科ですが、一度のぞいてみませんか?

藪田先生

A月B日
 生体肝移植後の肝静脈吻合部狭窄に対するPTAを終えて、血管造影室で手技報告書を記入していた時、一本の外線電話を受けた。
「出血の患者さんに対する緊急IVRの依頼です。」
大学病院から約60km離れた病院に急行し、緊急塞栓術を行い、止血に成功した。

C月D日
 肝細胞癌のRFAを終えて、医員室でマッタリと過ごしていた時に、関連病院からの外線電話があった。
「喀血の塞栓術をして欲しいけど、すぐ来られる?」
京都市内の病院へ急行し、緊急塞栓術を行った。

E月F日
 胃潰瘍からの大出血で内視鏡的止血が奏功せず、vital signが危機的になっている状況でIVRでの治療を依頼された。 血管造影像では消化管の内腔に造影剤が直接漏れ出すほどの激しい出血が認められ、コイル塞栓にて止血に成功した。コイル塞栓後からvital signは急激に回復した。

 Interventional Radiology(IVR)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
 学生さんや初期研修医の先生方とお話していると、放射線科・画像診断科のイメージを ①1日中モニターの前に座っている。②画像診断だけで治療を行わない。③患者さんと接する機会が少ない、 ととらえている人が少なくありません。 Interventional Radiologyに取り組む私自身に当てはめると、 ①モニターの前でじっとできるのは60分が限界。②CT画像や超音波画像下に経皮的治療を行い、③患者さんに寄り添いながら治療を行っています(施設によっては外来~入院まで主治医として担当している施設もあります)。

 Interventional Radiologyを一言でいうと、「画像診断の専門家が画像ガイド下に行う経皮的治療」です。 施設によって取り組んでいる手技も異なりますが、 vascular IVR;肝細胞癌など悪性腫瘍の塞栓術や動注化学療法、大動脈瘤へのステントグラフト留置、B-RTO、救急における消化管出血や骨盤骨折や臓器損傷に伴う出血に対する止血術、術後出血に対する止血術などと non-vascular IVR;肝細胞癌などの悪性腫瘍に対するRFA、PTCD(経皮的胆道ドレナージ)、画像ガイド下生検、膿瘍ドレナージなどに大別できます。Oncologyや救急など日常診療において重要な役割を担っています。京都大学では肝移植後の患者さんに対するIVR(肝静脈、門脈、胆管の吻合部狭窄などに対する経皮的治療)や肝細胞癌の経皮的治療で多くの実績を挙げており、世界に情報を発信しています。

 私自身は倉敷中央病院で放射線科医としてのキャリアをスタートさせました。放射線科だけでなく他科のactivityも非常に高い病院で、救急についても年間受入れ患者数約7万人、年間救急車受入れ約8000台にのぼり、放射線科医として非常に多くの経験を積むことができました。また、尊敬できる指導医の下でoncologyや救急などの質量ともに十分なIVRの修練ができたことが、現在の私自身のバックボーンになっています。現在は大学病院で手技の修練をしつつ、大学院生として臨床研究に取り組んでいます。大学病院でも手技や論文作成に長けた素晴らしい指導医に恵まれ、日々刺激的な毎日を送っています。 さて、話は冒頭のstoryに戻ります。これらのstoryのように放射線科医歴6年目の私が緊急IVRだけでなく待機的IVRでも市内や府内を走り回っています。ただでさえ少ない放射線科医の中において、日常診療においてその重要性が確立され、大きなニーズがあるのにもかかわらず、IVRに取り組む放射線科医はさらに少ないと言われています。現状は明らかに人手不足です。優れた指導医のいる施設で系統立った修練を積むことができれば活躍の場はとても広いと思います。おそらく多くの学生さんや初期研修医の先生方が「放射線科でもこういうことをしてるんだ!」と感じるIVRという分野をみっちりと修練することで、大きく世界が広がることと思います。また学問としてのIVRも非常に魅力的で、可能性の大きい分野であると思います。ありがちな技術自慢や手技自慢に終わらないように、治療成績や色々な経験を学会発表や論文発表で世界と共有することも大事なことであると思います。求む!若手IVR医!!

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