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頭頸部再生研究グループ

1)研究の動機

頭頸部領域の組織が悪性腫瘍や外傷で障害を受けると、機能的障害のみならず外見上も 著しい変形を受けるために、たとえ疾患から治癒しても社会的にも精神的にも重大な後遺症を引き起こすことになります。われわれが研究をスタートさせた最初 の動機は、この後遺症を残さないため、できる限りもとの形態を維持できるように、手術や事故によって欠損した組織を再生させようというものです。

2)研究対象臓器

私たちが現在再生の対象としている臓器は以下のようなものです。

声帯、輪状軟骨、甲状軟骨など喉頭枠組み、気管
顔面神経、反回神経、副神経、鼓索神経などの脳神経を中心とする末梢神経
上顎骨(口蓋)、頭蓋骨、頭蓋底、側頭骨などの骨組織
甲状腺、唾液腺などの腺組織
乳突蜂巣、粘膜、鼓膜など

3)研究の基本的スタンス

臓器組織を再生させるためには3つの要素すなわち、再生のもとになる細胞、その細胞が集まって組織を形成するための足場、それらを調節するさまざまな因子が必要で、それらが適切な環境の下に置かれたときに、組織の再生が可能になると考えられています。この考えは再生医学のなかでも組織工学(Tissue Engineering)という学問の基本的な概念です。われわれの研究は、この組織再生医工学に基づいて行われており、臨床に直結するものです。

再生医学研究のなかには、まだまだ臨床応用までに幾多のハードルを乗り越えねばならないものがたくさんあります。例えば、細胞を移植する場合その細胞が他者のものであれば、免疫拒絶反応や細胞の出所によっては倫理的問題も発生します。自己のものであっても細胞培養をする場合は、その培養液の安全性が問題になります。残念ながら、これらの安全性が確認されるまでは臨床応用には問題があります。したがって、われわれはこれらの問題を回避するために、現時点では人工的に作製した足場のみを生体に移植する方法を用いて臨床応用を開始しています。これは、特定臓器の局所再生は良好な生体環境のもとに適切な足場のみを移植することで可能であるという In situ tissue engineering という概念のもとに行われています。

もちろん、すべての臓器がこの方法で再生されるわけではありません。しかし、切除された脳神経の機能的再生、気管の一部や喉頭を構成する部位の部分的再生は臨床でも成功しています。近い将来、培養細胞を用いて喉頭全体までもが再生できる可能性があります。

4)どこまで研究が進んでいるか

頭頸部領域の器官は、形態そのものが機能と結びついているものが多いという特徴があり、正常な組織の形態をお手本に、構造や強度を含めて組織再生のデザインをすることで、機能的にもかなり再生が可能であることがわかりました。このことから、われわれは、従来の手術法とは全く異なる臓器再生医工学の応用といった新しい方法論でさまざまな組織の再生を試みてきました。

喉頭およびその周辺臓器の再生を例に挙げると、動物実験では、人工材料を用いて気管や喉頭を構成する枠組みである輪状軟骨、甲状軟骨、さらには声帯とそれを支配する反回神経の再生に成功し、2002年3月以降すでに京都大学医の倫理委員会の承認を経て臨床応用段階に入っています。たとえば、甲状腺癌で一部が気管に浸潤した患者さんの手術では、従来の手術法では気管を切除するか皮膚や軟骨を用いて欠損した部分の再建を行っておりましたが、自己組織置換型人工材料を用いた新しい治療法で、欠損した気管の再生に2例で成功しました。従来の方法では、手術を数回行わねばならなかったものが1回で済み、頸部の変形もほとんどなく、入院期間も半分以下に短縮されました。術後のQOLにおいても、癌浸潤のセーフティーマージンを十分にとることができるため再発のリスクを大きく 下げることができる点でも有効な方法です。

5)この研究からの発展は

喉頭のような複合臓器すなわち骨、軟骨、筋、粘膜上皮、結合織、神経を含む臓器の再生が可能であることは、将来的には、舌・口腔底、下顎骨、上顎骨など顔面全体に及ぶ再生の可能性が十分あるということです。この研究は単なる治療法の開発に留まらず、それから派生する様々な治療概念を内包するもので、従来の医学概念と くに癌に対する治療法を根本から変革させる可能性をもっています。

われわれは、再生医科学研究所を中心に多数の大学、研究機関とコラボレーションを行っております。対象とする臓器が広範囲に及ぶため一人でも多くの共同研究者を求めております。興味のある方は是非ご連絡ください。

お問合せは、下記にメール、Fax、手紙などでお願いいたします。

頭頸部再生研究グループメンバー
伊藤壽一、金丸眞一、平野 滋、安里 亮、田村芳寛、山下 勝、梅田 裕生、
大野 恒久、末廣 篤、木谷 芳晴、岸本 曜

連絡先
金丸 眞一
606-8507京都市左京区聖護院川原町54 
京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科
FAX: 075-751-7225
e-mail: メールアドレス

 

最終更新: 2010February3 22:30