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ES細胞由来の神経は有毛細胞とシナプスを作る

2007/12/18 松本昌宏

感音難聴は有毛細胞、又はラセン神経節細胞が障害されることにより起こりますが、これらが一旦障害されてしまうと、再生することはないため難聴は永久的なものとなります。現時点での対処としては補聴器や人工内耳で聴力を補うことになりますが、これらは確かに有効ではありますが、限界もあり必ずしも満足のいくものではありません。特にラセン神経節細胞の障害による感音難聴ではこれらは効果がありません。そこで、京都大学耳鼻咽喉科では新しい治療法として再生医療による感音難聴治療法の開発を目指して様々な研究を行っています。

私の研究テーマは胚性幹細胞(ES細胞)移植によるラセン神経節細胞再生です。ES細胞がラセン神経節細胞として働くためには、まずES細胞が神経細胞に代わり(分化し)、それが有毛細胞と接続する(シナプスを作る)必要があります。これまで、私はES細胞が有毛細胞とシナプスを作るか否かについてマウスを用いた実験で繰り返し検討を行ってきました。具体的には、まずマウスES細胞を既に確立された方法であらかじめ神経細胞へ分化させた後、この神経細胞を生後3日齢のマウスから採ってきた有毛細胞(本来のラセン神経節細胞はあらかじめ除去)と一緒に7日間、培養しました。その結果、ES細胞が神経突起を有毛細胞へ伸ばす様子が観察されました(図)。また、その神経突起は有毛細胞に接し、シナプス特有のマーカーを発現していました。これらのことからES細胞は有毛細胞とシナプスを作る能力があり、感音難聴治療のための移植細胞の候補となり得ることが分かりました。現在、当研究室では感音難聴にしたモルモットやサルでES細胞を移植して難聴が改善するかどうかを検討しています。

図 ES細胞(緑色)が、有毛細胞(青色)へ神経突起(赤色)を伸ばしている様子。



 

最終更新: 2012年1月31日 23:05