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昔から大事なもの、大切なものをいう場合、“肝心(腎)”という言葉が使われてきたように、肝臓は心臓、腎臓と共に大変重要な臓器と考えられてきました。
この、身体のほぼ中心にあり、最大の臓器はその重要な働きから人体の化学工場にたとえられ、“生命のみなもと”とも称せられます。すなわち、よく知られているようにアルコールを解毒したり、蛋白を合成したり、その他種々の物質の代謝、排泄などに関与し、その働きは500以上に及んでいるといわれています。
昔は肝臓病の診断は症状や所見だけからでありましたが最近の検査法の進歩により、今ではその病気の原因、現在の肝細胞の壊れの程度、肝臓の働きや肝臓の中の“できもの”(腫瘍)などがわかるようになり治療に反映できるようになりました。本日は外来で皆様からお受けする質問に答えるかたちで肝臓病の解説をしたいと思います。
肝臓病とは肝細胞が種々の原因で壊れる病態で、その原因として肝炎ウイルス、アルコール、薬剤によるものや代謝性のもの、さらには心臓病、糖尿病など他の疾患に伴うものなどがあります。なかでも近年増加傾向にあり気をつけなければならないものに脂肪肝があり、これにはグルメブーム、運動不足などが関係していると思われます。
しかし何といってもわが国での肝臓病の8割近くを占めているのは、肝炎ウイルスによるウイルス肝炎であります。ここではその代表的なウイルス肝炎をとりあげて少し詳しく触れてみます。
(1) ウイルス肝炎
肝炎ウイルスは現在A型からE型(以後A, B, C, D, E)まで5種類がわかっていますが、D型、E型はわが国ではほとんど発生しません。最近G型肝炎ウイルス(G)があきらかにされましたが、それほど頻度は多くないようです。従って問題になるのはA, B, C型ということになり、その中でも持続感染の問題や患者さんの数からもC型肝炎が最重要といえます。
これら肝炎ウイルスの感染経路は食物、水などからうつる経口感染と血液、体液などからうつる非経口感染がありますが、B型、C型肝炎で問題になるのは非経口感染です。B, Cについては検出方法が確立され、輸血や血液製剤による感染はほぼ消滅しつつあります。その他、CはBと違って血中のウイルス量が極めて少ないので母子感染や性行為感染はまれです。一方、これまでウイルス保持者(キャリアー)の成立で問題となっていたBによる母子感染については、防御抗体であるHBs抗体を大量に含んだ免疫グロブリンやワクチンによる感染防止が講じられたため、これも激減しています。またGはCの親戚のようなもので、やはり非経口感染ですが、その実態は今、解明されているところです。
(2)ウイルス肝炎の経過
ウイルス肝炎の病態としては一過性感染と持続感染とがあります。前者の多くは知らない間に感染して治ってしまいますが(不顕性感染)、一部は急性肝炎の形をとります。さらにそのごく一部は肝臓が広範囲に障害を受けて2ヵ月以内に死亡するため恐れられている劇症肝炎の形をとります。A型肝炎のほとんどはこの一過性感染です。一方、B型、C型、G型は一過性感染もありますが持続感染を起こし、一部の症例では慢性肝炎→肝硬変→肝がんへと進展するため、より大きな問題といえます。
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問2. 健康診断、検診でHBs抗原陽性(またはHCV抗体陽性)といわれたのですが........?
HBs抗原はBの表面の蛋白成分でウイルスの一部です。従ってこれが陽性ということはBが身体にいることです。先程述べましたように一過性感染と持続感染がありますが、この場合偶然一過性の時期(1〜3ヵ月以内)にみつかるということもないとはいえませんが、ほとんどは持続性でいわゆるウイルス保持者(キャリアー)と思われます。従ってさらにウイルスの状態などを含めた詳しい検査(場合によっては超音波エコーなども)により、現在どのような状態なのか、治療は必要かなどを知る必要があります。
多くの場合は肝機能検査は全く正常でウイルス量も少ない無症候性キャリアーで年に一回ほどの定期検査をうけるだけで特に治療の必要もありません。
一方、C型の場合はウイルス量が少ないため、現在のところB型のようにウイルスの一部(抗原)を血液検査で簡単にみることはできないので、抗体で診断しているのです。
ややこしいのですが、HCV抗体陽性はCに感染して治っている場合とCが身体にいるキャリアーの場合が考えられます。そのため実際にCがいるかいないかを特別な検査(今では保険適応になっています)で調べるのです。その結果陰性であれば前者で陽性であれば後者です。キャリアーであればB型と同様にさらに検査を進めます。C型慢性肝炎で場合によっては、現在インターフェロンによりCを身体から追い出し、治せる場合がありますのでさらにウイルスの量や型(これも最近保険適応になりました)を調べてもらい、よく相談されたらよいと思います。
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肝臓病のなかには遺伝するものもありますが、ウイルス肝炎は遺伝しません。ウイルス肝炎は感染症でウイルス量の多いB型の場合は母から子供に感染する場合がありますが、前に書きましたようにC型の場合は母子感染はまれです。
まだよくわかっていませんが、肝炎という病気は遺伝しませんが、感染しても一過性ですんだり、持続したり、あるいは持続してもなかなか進展しなかったり、逆に急速に肝硬変、肝がんになったりする差異に遺伝が関係しているかもしれません。
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これまで述べてきましたようにウイルス肝炎ではウイルスの持続感染が問題で、一部の症例では肝炎が持続し肝硬変へと進んでいく場合があります。
肝硬変になるともちろん肝がんの発生が問題になりますが、食道静脈瘤による出血、胃炎やビランからの出血(門脈高圧性胃腸症)、意識障害(肝性昏睡)、腹水やさらには感染しやすくなることなどの合併症も問題になります。最近ではこれらに対する治療法のめざましい進歩がありますので、それほど心配には及びません。しかし、インターフェロンを含めた肝炎の治療やこれら合併症に対しても早期発見、早期治療が原則であることを自分の“肝”に銘じてほしいと思います。