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学生の皆様へ

産婦人科を考えている先生へ

 ひとは己が生き延びたいという「自己保存の欲求」と、子孫を残したいという「種の保存の欲求」の、時に相反する2つの欲求に突き動かされて生きています。健康で暮らしていきたい、というのは自己保存、子供が欲しいというのは種の保存の欲求です。産婦人科は医学領域のなかで唯一、この2つを同時に取り扱う分野です。

 源氏物語の主人公、光源氏は自分の出産で母を失い、息子の出産で正室葵の上を失くします。亡き母への思い、正妻との不本意な別れがその後の源氏のきらびやかな生涯の底を通奏となって流れていきます。この日本最古の小説はひとりの男性の栄華の物語であると同時に華やかな女性遍歴の陰で命を引き継ぐことのはかなさと尊さにひとがどのように直面し、葛藤し、翻弄されつつも生き抜いていくか、という世代継承の物語でもあるのです。

 もし、私たちに種の保存の欲求がなかったら・・、自己保存だけを求める生き物であったら・・、世の中はどれほど味気ないことでしょうか?私たちは愛情というものを知り得たでしょうか?未来の環境や平和に関してこれほど関心を持てたでしょうか?考えてみると、私たちが日頃、愛でている花々も、デザートの主役のフルーツも、次世代をつなぐためにある「生殖器」なのです。生殖は我々の人生に潤いを与え、色を与え、歓びを与え、意味を与えているのです。

 私たち産婦人科医は日々、この根源的な2つのひとの願いを医学の面から支えるために奮闘しています。もちろん、うまく行かないこともたくさんあります。しかしそれも含めてこの2つを同時に扱う、ということが学問的にも臨床的にも産婦人科という領域に独特の深みを与えているような気がします。実は私自身、産婦人科の世界に飛び込んで25年になりますが、このように感じるようになったのは最近のことです。以前も産婦人科はもちろん好きでしたが、多くの医学領域のなかのひとつ、と思っていました。産婦人科を選んだのもそれほど深い思慮があってのことではありません。それだけに25年前の自分の選択を今になってほめてやりたい気分です。男一生、あるいは女一生の仕事として不足はありません。自分こそは、と思っているひと、ぜひ、我々の世界に飛び込んできて下さい。自分は大丈夫かな、と思っているひと、大丈夫です。産婦人科の懐は広くて深い。あなたを生かすことができる仕事がこの領域には必ずあります。待っています。

京都大学医学部婦人科学産科学教室 教授 万代 昌紀

京都大学医学部附属病院 産科婦人科

〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
京都大学大学院医学研究科 器官外科学講座
(婦人科学産科学)

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