転写因子Runx(ラント関連遺伝子)ファミリーは3種類存在しますが、それらはそれぞれ特異的な機能を有しています。Runx1/AML1は造血幹細胞、Runx2は骨芽細胞および軟骨細胞の分化にそれぞれ必須であり、疾患とのかかわりではRunx1は急性骨髄性白血病、Runx2は鎖骨頭蓋異骨症の原因遺伝子と考えられています。それらに対しRunx3は、Runx1およびRunx2にくらべ研究が遅れ、永年その機能が不明でしたが、最近になって、徐々にその機能が解明されてきました。
 上記のRunx2/Cbfa1/PEBP2αAを欠失させたノックアウトマウスでは骨形成が全く認められません。また、Runx2のドミナントネガティブマウスはRunx2ノックアウトマウスよりも軟骨細胞の成熟抑制がより進むため、他のRunxファミリーが軟骨の発生に関与しているのではないかと推測することができました。特に、Runx3は胎生12.5日以降のマウス胚において成熟過程にある四肢および体幹の軟骨細胞に強く発現していることが判明したため、骨格形成における何らかの関与の可能性が強く示唆されました。
 また、Runx3のノックアウトマウスの解析により、癌抑制遺伝子として胃癌の発症に重要な影響を与えていることが判明しました。その他の報告からRunx3の機能は多岐にわたると考えられますが、上述しましたように骨格形成にも関与していることを証明するため、Runx2およびRunx3のダブルノックアウトマウスを作製し、その解析を行ったところ、ダブルノックアウトマウスは四肢において、Runx2単独のノックアウトマウスとくらべ著明に軟骨細胞の分化が阻害されていました。つまり、Runx2およびRunx3の発現量に応じて軟骨細胞の分化が抑制され、かつ四肢の長さが減少していました。これは、Runx3欠失による軟骨細胞の分化増殖能の低下および軟骨細胞の大きさの減少によるためと考えられました。
 以上のように、Runxファミリーは、生物の発生において大変興味のある因子であり、現在、顎口腔領域の発生におけるこの因子の果たす役割について機能解析を進めています。今後も、Runxファミリーや、この因子と密接な関連があるヘッジホッグファミリー、BMP/TGFβスーパーファミリー、FGFファミリーについて、それらの機能解析を専門に行っている種々の研究室と共同で研究を進めていく予定です。