京都大学整形外科における股関節疾患に対する治療について

股関節外科担当


後藤公志、宗和隆、黒田隆


股関節外来:毎週木・金曜日


本院では、初診時の予約は、患者さんから直接お申込みいただくことはできないこととなっています。ついては、初めて本院整形外科の受診を希望される場合は、かかりつけ医等の医療機関にご相談の上、医療機関から地域医療連携室あてに「患者登録票(医療機関専用)」及び「紹介状」をFAX送信いただき、予約をお取りください。その際可能であれば、いずれかの専門外来を指定していただきますと診療がよりスムーズになります。 なお、本院の他診療科を受診中の方は、受診している診療科の医師より予約をお取りください。 また、初診紹介予約手続きの詳細については、
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/medical/index.htmlをご覧ください。


関節温存手術について

臼蓋(棚)形成術と寛骨臼回転骨切り術

 軟骨が完全に減っている場合には人工関節置換術を行っていますが、軟骨が残っている臼蓋形成不全に対しては上記の2つの手術を積極的に行っています。臼蓋形成術は当院でこれまでに350例以上行われている手術で、比較的若年者で軟骨の摩耗の少ない股関節に対して行った場合に優れた長期成績が得られます。術後の疼痛改善に優れ、出血もわずかで非常に安全に行われる手術です。

 

臼蓋形成

臼蓋形成


一方、軟骨の減りがある方で、股関節外転位で関節適合性の改善が認められる50歳程度までの人に寛骨臼回転骨切り術が適応となります。当院で行われている寛骨臼回転骨切り術では、骨盤内側のアプローチで手術するために歩行に重要な外転筋群を傷めません。このため筋力低下が抑えられ、骨癒合も得られやすいのが特徴です。また、皮膚切開も10cm程度で済みます。治療効果が非常に大きい反面、難易度の高い手術ですが、これまで同種血輸血を要したこともなく、運動麻痺などの合併症なく、安全に行える体制を整えております。いずれの手術においても術後2か月ほどで全荷重歩行が可能となり、3か月程度で杖なしで歩行可能となり、スポーツ活動への復帰が可能となります。

 

CPO

CPO

CPO

 


大腿骨頭壊死に対する治療

 本邦にて開発された大腿骨頭回転骨切り術をはじめ、当院では大腿骨頭壊死に対する革新的な新規治療方法に取り組んでいます。その一つが大腿骨頭の壊死部分を掻把して、培養した骨髄間葉系幹細胞を人工骨とともに移植する治療で、臨床治験を終えて優れた治療成績を報告しています。また、bFGF含有ゼラチンハイドロゲルを壊死部に注入する治療法についても、臨床応用を目指して開発を進め、臨床試験を行っています。また、低侵襲に壊死部を掻把して、骨移植を行う治療にも取り組んでいます。

 

だいたい骨頭壊死
だいたい骨頭壊死

だいたい骨頭壊死

だいたい骨頭壊死

股関節鏡手術

 当院では、股関節唇損傷、股関節インピンジメント、関節内遊離体、滑膜炎、その他原因不明の股関節痛に対して、関節鏡手術を積極的に行っています。股関節鏡手術における患者さんの満足度は人工股関節置換術には及ばないものの、低侵襲で社会復帰も早い為、近年は症例数が非常に増えています。

 

股関節鏡
股関節鏡

股関節鏡


人工股関節置換術

 京都大学医学部整形外科教室は、昭和45年に日本で最初にチャンレー式人工股関節を導入し、現在に至るまでに3000例以上の人工股関節置換術を行っています。その長期成績は手術手技や人工関節の材質改良により飛躍的に向上し、15年で96%の生存率という、世界的にも非常に優れた臨床成績を達成しています。手術にあたっては、CTおよびレントゲン写真による2D、3Dコンピューターシミュレーションを行い、患者さん毎に最も適した人工関節を選択しています。手術も患者さんの体格に応じて9-12cmの小さな皮膚切開で出来るよう工夫しています(最小侵襲手術:MIS)。また、高齢化に伴い人工関節のゆるみに対する再置換術が増加していますが、骨欠損部に対しての同種保存骨や人工骨と臼蓋補強器具の併用にて優れた臨床成績を達成しており、再置換術後もほぼ以前の機能を回復することができます。京都大学では600例を超える再置換手術をこれまで行っており、安全に手術が行える体制を整えています。
最新の人工股関節の開発にも取り組んでいます。京都大学では歴史的にセメントを用いた人工股関節置換術を数多く手掛けてきましたが、京都大学工学部との共同開発により開発した生体活性チタン(骨と化学的に結合する処理を施したチタン)を用いたセメントを使用しない人工股関節は、手術後10年を経過した症例でも極めて良好な成績をおさめており、弛みを生じた症例は1例もありません。現在では、さまざまなセメントを使用しないインプラントも使用しています。
人工股関節手術における出血量は最小侵襲手術の導入によって著しく減少しています。術中の出血量は概ね300cc以下の為、術前の自己血貯血は不要で、術中血液回収装置を使用することによりほぼすべての初回手術で同種血(他人の血液)輸血は回避できます。また、再置換手術においても近年では同種血輸血を要することは稀になっています。手術により股関節の痛みはほぼ消失し、股関節の動く範囲が改善し、また脚の長さを調節することも可能で手術前と比較して歩きぶりが良くなります。術後のリハビリも年々短縮され、現在では術直後から荷重制限はありません。術後2日で車椅子トイレ、3日で歩行開始、2~3週間で退院する時には杖なしで歩くことが可能になっていることがほとんどで、患者さんへの負担が軽減されています。 京都大学では、股関節の痛みを取るだけでなく、脚長差をなくし、健常人と変わらない歩容を取り戻せるように、綿密で正確な手術手技の実践と、入院中の歩容改善指導にも力を入れています。人工股関節手術を受けた後は事務職なら退院後すぐに職場復帰可能で、車の運転も退院後すぐに行えます。術前正座可能であった場合には、術後も正座は可能で、3カ月では水泳、サイクリング、卓球、ゴルフなどの人工関節に負担のかからないスポーツを楽しむことが可能です。またハイキング、旅行などを楽しんでおられる方も大勢おられます。


THA
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