よく受ける質問

膵島移植に関して、皆様からよく受ける質問をあげました。

Q01:"膵島"というのはなんですか?
Q02:インスリン依存状態糖尿病とはなんですか?
Q03:糖尿病の治療としてインスリン注射があるのにどうして膵島移植が必要なのですか?
Q04:膵島を分離するというのはどういうことですか?
Q05:膵島移植と膵臓移植の違いは何ですか?
Q06:糖尿病の合併症があっても膵島移植を受けられますか?
Q07:心停止ドナー膵島移植と生体ドナー膵島移植とのちがいは?
Q08:膵島移植を受けるとインスリンは要らなくなるですか?
Q09:膵島移植でも免疫抑制剤は必要ですか?
Q10:小児患者も膵島移植を受けることができるのですか?
Q11:膵島移植を受けてから妊娠してもよいのですか?
Q12:移植後の日常生活での注意点について教えてください?
Q13:移植待機中に気をつけないといけないことは何ですか?
Q14:再生医療で膵島がつくれると聞いたのですが本当ですか?

Q01:"膵島"というのはなんですか?

A01:膵臓は二種類の組織からできています。ひとつは消化酵素を作って消化管に分泌する外分泌の役割をする組織と、もうひとつは血糖(血液中のブドウ糖)を調節するホルモンを作って血管の中に分泌する内分泌腺の役割をする組織です。この内、血糖値調節に働く内分泌組織を膵島と呼んでいます。通常、膵臓のほとんど(95%以上)が外分泌組織で、内分泌組織は5%以下の容量を占めているのみであるといわれています。顕微鏡で膵臓の切片を観察すると内分泌腺組織が外分泌腺組織の海に浮いている島のように見えることからこの名前があります。膵臓の中におよそ100万個あります。血糖値をあげるグルカゴンというホルモンがα細胞から、血糖値を下げるインスリンというホルモンがβ細胞から分泌されます。インスリンは人体で唯一血糖を下げるホルモンです。

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Q02:インスリン依存状態糖尿病とはなんですか?

A02:内因性のインスリン分泌が枯渇し、インスリン製剤を投与しなければ生命を維持できない病態をインスリン依存状態糖尿病といいます。インスリンは生命を維持するために必須のホルモンです。インスリンによって血液中のブドウ糖は身体のあらゆる組織(脳、肝臓、筋肉、脂肪組織など)に取り込まれ、取り込まれたブドウ糖はそれぞれの組織が働くエネルギーとなります。その結果として血糖が下がります。もし、インスリンがなければ血液中のブドウ糖が組織に取り込まれることが困難となり、組織本来の働きをすることができない、すなわち生命を維持することが困難となります。生体にはインスリンのような働きをする別のホルモンがありません。インスリンは膵島内のβ細胞によって産生、分泌され、このβ細胞が何らかの原因によって身体の中から消失することによってインスリン依存状態糖尿病となります。 自己免疫疾患といわれている1型糖尿病、膵臓を外科的に摘出した場合、膵炎などがインスリン依存状態糖尿病の原因となります。

Q03:糖尿病の治療としてインスリン注射があるのにどうして膵島移植が必要なのですか?

A03:糖尿病の大半は、運動療法、食事療法、さらに薬物療法、そしてインスリンの注射で血糖値がコントロールできます。つまり、大半の糖尿病はコントロール可能です。ところが、β細胞の崩壊などで完全にインスリン分泌能が枯渇しますと、インスリン注射でのコントロールが困難になる場合があります。この場合、血糖値が高すぎると、ケトアシドーシスという体が酸化してしまう状態になり、低すぎると低血糖性意識消失を起こし、どちらも放置すれば死亡します。また、血糖値をインスリンでコントロールしても早ければ5年以上経つと合併症が発症し始めることがあります。合併症は血管病変が特徴で、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、網膜症、末梢神経障害が起こります。心筋梗塞、脳卒中は生命の危険があり、腎不全も透析開始後の予後が他疾患を原因とするものより不良です。インスリンが枯渇して血糖のコントロールが困難になると膵臓あるいは膵島移植の適応となります。

Q04:膵島を分離するというのはどういうことですか?

A04: 膵島は膵臓内の血糖を調節する内分泌細胞の集団ですが、この膵島を膵臓から取り出すことを膵島分離といいます。膵島は他の組織とコラーゲンによって繋がっています。このコラーゲンを溶かすコラゲナーゼという消化酵素を膵臓へ注入することで、膵島を他の組織から遊離します。その後、膵島は他の組織よりも軽いという特徴を使って密度勾配遠心分離法により純化します。

Q05:膵島移植と膵臓移植の違いは何ですか?

A05:どちらも移植によってインスリン分泌が再開するため、血糖値の安定化が得られ、患者様の生活の質の向上と糖尿病性合併症の進展予防を図ることができます。
膵臓移植は外科手術で膵臓そのものを血管吻合して移植する臓器移植です。高い確率でインスリン治療から離脱しますが、移植膵の血栓症、膵炎、あるいは膵液瘻等の合併症を起こす可能性もあります。多くの場合、糖尿病透析患者の方に対して膵臓腎臓同時移植または腎移植後膵臓移植が行なわれています。
膵島移植は血糖の調節に必要な膵臓のおよぞ5%を占める膵島を分離して移植するいわゆる細胞移植です。外科手術ではなく局所麻酔で門脈にカテーテルを留置して、点滴の要領で膵島を移植しますので、患者様に身体的負担が少なくて済みます。一度の膵島移植で血糖値の安定化が得られますが、通常、インスリン離脱を目指して2または3回の移植を行ないます。

Q06:糖尿病の合併症があっても膵島移植を受けられますか?

A06: 糖尿病性合併症がとのようなものであるかによって膵島移植の適応がかわります。例えば、糖尿病性網膜症がある方は、移植後に血糖値が安定化した際に網膜症が急に進行しますので、移植前に治療を済ませておく必要があります。また、腎臓機能が低下している方、既に人工透析あるいは腎移植を受けられている方は当科にお問い合わせください。

Q07:心停止ドナー膵島移植と生体ドナー膵島移植とのちがいは?

A07: 生体膵島移植は健常なドナーから膵臓を半分頂き、膵島を分離し移植します。生体膵島移植は適切なドナーがいれば移植が行えます。心停止ドナー膵島移植は、死亡時臓器提供の意思を示したドナーから膵臓を頂き、膵島を分離し移植します。心停止ドナー膵島移植はまず移植希望登録をし待機し、移植の順番が回ってくるのを待ちます。
京都大学病院では生体ドナー膵島移植を希望される場合でも、心停止ドナー膵島移植の登録が必要となります。

Q08:膵島移植を受けるとインスリンは要らなくなるですか?

A08: 充分量の膵島を移植すればインスリンが不要になることがあります(通常2−3回の移植)。
現時点では、移植後年数を経るにつれ、インスリン注射を再開する可能性があります。

Q09:膵島移植でも免疫抑制剤は必要ですか?

A09: 膵島移植は細胞移植であるため、臓器移植より拒絶反応が弱いと考えられています。そのため、副作用が強いステロイド剤は使いません。また、腎臓に毒性のある臓器移植で一般に用いられているサイクロスポリンなどのカルシニューリンインヒビターは臓器移植のおよそ1/4ほど使うだけですので腎臓への負担は軽減できます。その代わりに、もともと抗真菌薬、抗癌剤として開発され、腎毒性や糖尿病原性が全くないラパマイシンという免疫抑制剤を使います。ラパマイシンの副作用について白血球の一時的な現象、口内炎、浮腫などがあります。
なお、欧米では膵島は拒絶反応が弱いということを利用して免疫抑制剤が全くいらない膵島移植を大規模で研究しています。そのため、将来的には不要になると考えれています。

Q10:小児患者も膵島移植を受けることができるのですか?

A10:ラパマイシンの小児対する影響が明確になっていませんので、現時点では基本的に成人が対象です。

Q11:膵島移植を受けてから妊娠してもよいのですか?

A11: ラパマイシンの胎児への影響が明確になっていませんので、現時点では妊娠は回避していただいています。将来的には妊娠が可能となる免疫抑制剤に切り替えることも考えています。

Q12:移植後の日常生活での注意点について教えてください?

A12: 移植後は免疫抑制剤を内服していただきますので、抵抗力の低下や薬の作用について以下の点に注意が必要です。
移植後6ヶ月間はなるべく人ごみを避けて、うがいや手洗いをしっかり行ってください。
生野菜や生の果物は3ヶ月間、お刺身や生卵は6ヶ月間控えてください。
動物にはいろいろな細菌やウイルスがいますので、ペットを抱きしめたり、なめられたりという濃厚な接触は避けてください。
グレープフルーツは免疫抑制剤の作用に影響しますので食べることができません。
また、免疫抑制剤を飲み忘れないようにすること、移植後も食事療法や運動療法を持続し定期的な受診をすることが大切です。
血糖値が安定するまでは車の運転は危険ですので控えてください。

Q13:移植待機中に気をつけないといけないことは何ですか?

A13: 血糖コントロールは難しいことだと思いますが、内科主治医の先生と相談しながらインスリンのコントロールや自己血糖測定、食事や運動療法など自己管理をしていくことが重要です。
定期的な内科受診はもちろんですが、眼科や歯科、耳鼻科受診もお願いします。
移植された膵島細胞のために禁酒、禁煙を心がけましょう。
待機期間中にはわからないことや不安な気持ちになることがあると思います。
そのようなときには遠慮せずにご連絡ください。

Q14:再生医療で膵島がつくれると聞いたのですが本当ですか?

A14: β細胞を誘導する技術の研究が現在世界中で行われています。インスリンを血糖感受性と分泌できる細胞を作成できるとの報告を認めますが、この最先端の技術をしても、移植に値する質と量のβ細胞はいまだできず、今後の課題となっています。