小児心臓外科

狭心症や弁膜症などの後天性心疾患とくらべて、先天性心疾患の一番の特徴は、心臓の基本的な形や心臓の中の血液の流れ方が疾患によって全く違うということです。

主な先天性心疾患は教科書に独立した章として載っているものだけでも約20から30種類あり、細かいバリエーションや疾患の組み合わせなどを考えると正に疾患は千差万別と言えましょう。

従って、患者さんの状態に応じて、個々に最も適切な治療法を考えることが、より重要性を持ってきます。

当科では新生児から成人先天性心疾患まで、先天性心疾患を専門とし、国内外の先天性心疾患専門施設(静岡県立こども病院、パリ大学付属ネッケル小児病院など)で修練を行ったスタッフが診療に当たっており、診療内容は小児専門病院に引けをとらないものと自負しています。


以下、主な疾患をいくつか取り上げ、治療方針の説明をします。


1. 心房中隔欠損、肺高血圧を伴わない心室中隔欠損
2. 肺高血圧を伴う心室中隔欠損、心内膜床欠損など
3. ファロー四徴
4. 完全大血管転位、総肺静脈還流異常、大動脈縮窄複合などの複雑心疾患


1. 心房中隔欠損、肺高血圧を伴わない心室中隔欠損

これらは患者さんの数が最も多い疾患です。自覚症状が無く、学校検診で発見される場合も少なくありません。

手術が必要かどうかは心臓の中にあいている孔(心房中隔欠損、心室中隔欠損)を通る血液の量がどのくらいであるかによって決まります。この量を測るためには通常、小児科に入院のうえ心臓カテーテル検査を行います。カテーテル検査の結果、手術が必要と判断されれば、御家族と相談の上手術時期を決定します。

手術の時期は安全に無輸血手術を行うことができる体重10-15kg以上を一つの目安としています。

学校へ通っている子供さんであればしばしば夏休みを利用して手術を予定します。


2. 肺高血圧を伴う心室中隔欠損、心内膜床欠損など

これらの疾患を持つ患者さんは、肺を流れる血液の量が非常に多いため、生後間も無い時期から、体重の増え方が悪かったり、呼吸器感染をくり返したりします。

原則的にすべての患者さんが根治手術が必要です。

患者さんの多くは生後2ヵ月から3ヵ月の間に多呼吸、哺乳不良、体重増加不良などの心不全症状が表れてきます。これらの症状が強い場合には(例えば、体重がほとんど増加しないなど)その時点で手術を考慮しなければなりません。

利尿剤、強心剤の内服で症状が改善すれば手術の時期は少し後まで待つことができますが、1歳以上になってくると肺の血管が痛んでしまうこともあり、一般的には乳児期(1歳以下)で根治手術をするのが好ましいと考えます。

この時期に根治手術をすれば、術後遠隔期の身体発育、運動能力は一般に良好に保たれます。

また、体重が7-8kgになっていれば乳児期でも無輸血手術が可能な場合があります。

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3. ファロー四徴

ファロー四徴は唇や爪の色が悪くなるチアノーゼ性心疾患の中で最も多い疾患です。

一般的にファロー四徴の患者さんは皆さん手術の適応となり、根治手術を行った後はほぼ通常の日常生活、学校生活をおくることが可能です。以前はファロー四徴の根治手術は大体年齢2歳以上で行うのが安全とされ、それまでにチアノーゼの症状(運動制限、発育遅延、無酸素発作など)が強く出る患者さんに対しては短絡手術(ブラロック手術など)を行っていました。

現在ではファロー四徴の根治手術は極めて安全に行うことができるため、症状のある患者さんを2歳になるまで待って頂くメリットはほとんどありません。ファロー四徴の患者さんに対して短絡手術を行うことも非常に少なくなりました。

世界の先端病院の中にはファロー四徴に対してはもはや短絡手術は行わず、チアノーゼ症状が強ければ新生児期でも根治手術を行う方針にかわってきているところもあります。

日本では新生児期にファロー四徴の根治手術を行うことはまだ一般的ではありませんが、わたしたちの施設でも生後6ヵ月になれば根治手術を行っています。

ファロー四徴の手術死亡率は現在数%以下まで改善しており、私達の施設でも死亡例はありません

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4. 完全大血管転位、総肺静脈還流異常、大動脈縮窄複合などの複雑心疾患

これらの疾患はいずれも複雑心奇形では最も多いものです。

いずれの疾患も心不全、チアノーゼなどのために新生児期あるいは乳児期早期に手術が必要となるのが普通です。

現在ではいずれの疾患に対しても新生児期に根治手術が第一選択として行われるようになり、手術成績も良好です。

またこれらの疾患は手術前の状態が不安定なことも多く、心臓カテーテル検査によって状態が悪化する場合もあります。最近では心臓超音波検査(心エコー)診断が非常に進歩したため、上記のような複雑心奇形に対しても例外的な場合を除いて心臓カテーテル検査は必須のものではなくなってきました。

わたしたちもこれらの疾患に対しては可能であれば心臓超音波検査診断のみを行い、その後根治手術を行うようにしています。根治手術の成績は最近では一般的に5%程度まで下がっており、わたしたちの施設でも、これらの疾患に対する根治手術で死亡例はありません。

また、生まれて非常に早い時期に根治手術ができるようになったため、患者さんが成長した時の身体発育や運動能力も以前にくらべ非常に良くなっています。例えば完全大血管転位の赤ちゃんに対しては最近では生まれて2週間前後で動脈スイッチ手術と言う手術を行いますが、その後の成長や運動能力は病気のない赤ちゃんとほとんど区別がつきません。

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