膠原病とは

1. 膠原病という「病気のとらえ方」
2. 膠原病に含まれる病気
3. 「膠原病」は病名ではない
4. 膠原病とリウマチ性疾患の関係
5. 膠原病は「自己免疫疾患」
6. 「難病」としての膠原病
7. 膠原病の現在の問題
8. 膠原病の新しい治療




1. 膠原病という「病気のとらえ方」

膠原病は、病理学者Paul Klemperer(1887-1964)が1942年に提唱した新しい病気の考え方です。

何世紀もの間、病気は特定の臓器が障害されて起こるとする「臓器病理学」の考えが支配的であり、病気の診断は臓器の病変に基づいて行われてきました。

Klempererは、全身性エリテマトーデスのように多数の臓器が同時に障害され、どの臓器が病変の中心であるのかを特定する事が出来ない病気があることに気づきました。
綿密な病理組織学的検索によって全身の「結合組織」が病変の主座であり、しかも「フィブリノイド変性」という病理組織学的変化が共通して見られることを示し、このような疾患群を「膠原病」(Collagen Disease)と命名しました。

膠原病の考え方は、以後様々な批判と新しい知識が加わりながらも基本的には大きく変わることなく現在に広く定着しています。(表1)


表1.膠原病の特徴
1.原因不明の疾患
2.全身性炎症性疾患
 発熱,体重減少,倦怠感,易疲労感
3.多臓器疾患
 皮膚,関節,腎臓,肺,心臓,神経,筋,消化器,眼,血液
4.慢性疾患
 再燃と寛解を繰り返す
5.結合組織のフィブリノイド変性
6.自己免疫疾患

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2. 膠原病に含まれる病気


全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、強皮症、皮膚筋炎および多発性筋炎、結節性多発性動脈周囲炎、関節リウマチの6疾患は古典的膠原病と呼ばれています。

現在ではこれらの疾患に加えて、シェーグレン症候群、混合性結合組織病(MCTD)、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎、好酸球性筋膜炎、成人スティル病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ベーチェット病、サルコイドーシスなども膠原病関連疾患に含まれます。

免疫・膠原病内科ではこれらの病気を中心に診療しています。(表2)


表2.免疫・膠原病内科の対象疾患
全身性エリテマトーデス* 高安動脈炎(大動脈炎症候群)*
シェーグレン症候群 変形性関節症
強皮症(全身性硬化症)* 側頭動脈炎
強直性脊椎炎 骨粗鬆症
多発性筋炎および皮膚筋炎* 顕微鏡的多発血管炎
ライター症候群 痛風および偽痛風
関節リウマチ 過敏性血管炎
乾癬性関節炎 再発性多発軟骨炎
悪性関節リウマチ* ヘノッホ・シェ-ンライン紫斑病
反応性関節炎 サルコイドーシス*
結節性多発動脈炎* 混合性結合組織病*
抵リン脂質抗体症候群 アレルギー性疾患
ウェゲナー肉芽腫症* ベーチェット病*
リウマチ性多発筋痛症 原因不明の関節疾患
ビュルガー病* リウマチ熱
成人スティル病 原因不明熱
*は厚生労働省が特定疾患治療研究対象疾患 (いわゆる難病)に指定し,公費補助される疾患

厚生労働省難病情報センターへのリンク



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3.「膠原病」は病名ではない

膠原病の考え方は、とりわけ臨床医には好意的に受け入れられました。
しかし、Klempererは「膠原病」が「診断名」として安易に使われすぎることを懸念し、この名称は臨床的および病理学的に理解が困難な症例に対するくずかご的診断名ではないと警告しました。

Klempererの意図したことは、病気の成り立ちについての考え方であり、決して疾患名あるいは診断名を提供することではありませんでした。
しかし、半世紀たった現在でも生半可で安易な「膠原病」という病名が堂々とまかり通っていることを考えるとKlempererの危具は当を得たものであったといえましょう。

このような経過から、欧米では現在「膠原病」の名称が論文や教科書で使われることはほとんどなく「結合組織疾患」(connective tissue disease)や「リウマチ性疾患」(rheumatic disease)の名称が多く用いられています。

一方、わが国では「膠原病」の名称は語呂の良さもあり、ともすると病名としても誤用されるきらいはありますが,現在でも広く定着しています。


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4. 膠原病とリウマチ性疾患の関係


「リウマチ」(rheumatism)という言葉は、もともとはギリシャ語で「流れ」を意味し、痛みの原因となる物質が体の中を流れると考えたことに語源があります。

ここから関節・筋肉・骨などの運動器官の痛みを伴う病気をすべて「リウマチ性疾患」と呼ぶようになりました。
わが国では単に「リウマチ」という場合は。関節リウマチという特定の病気のことをさす場合がほとんどです。

膠原病全般に共通する症状の一つとして、全身の関節の痛みが高頻度に見られることから、膠原病のほとんどはリウマチ性疾患です。

また、逆にリウマチ疾患の中には膠原病の定義に当てはまる病気が多く見られます。



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5. 膠原病は「自己免疫疾患」


膠原病患者の血液中には、自分自身の体の構成成分と反応してしまうリンパ球(自己反応性リンパ球)や抗体(自己抗体)が見つかり、このことが膠原病という病気を引き起こす原因になっていると考えられます。

このために膠原病は「自己免疫疾患」とも呼ばれます。

したがって、膠原病の治療には病気を引き起こすリンパ球の働きを抑えたり、自己抗体が作られるのを抑えるために、副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)や免疫抑制薬が用いられます。



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6. 「難病」としての膠原病


膠原病は、原因が不明で治療法のない「難病」というイメージが強くもたれていました。
わが国では膠原病とその関連疾患の多くは,厚生労働省によって特定疾患(いわゆる「難病」)に指定され、公費補助対象疾患とされています(表2)。

しかし、近年の医学の進歩によって、膠原病の生命予後は大きく改善しました。

全身性エリテマトーデスでは、ステロイド治療が導入される以前の3年生存率は50%以下でしたが、70年代には5年生存率が75%、80年代は90%、90年代になってからは、95%以上と劇的な改善がみられています。


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7. 膠原病の現在の問題


生命予後が全般的に向上する一方で、依然として治療法が確立していないために死亡率が高く、または重い障害を残すような難治性の症状がクローズアップされてきました。

このような難治性病態としては、全身性エリテマトーデスの重症腎障害、中枢神経症状、肺胞出血、強皮症の内臓臓器病変、ステロイド抵抗性筋炎、膠原病に伴う間質性肺炎や肺高血圧症、結節性多発性動脈周囲炎やウェゲナー肉芽腫症などの全身性血管炎、劇症型抗リン脂質症候群、難治性のリウマチやアミロイドーシスなどがあります。

また、膠原病の治療によって誘発される障害もあり、ステロイド薬による骨粗鬆症、日和見感染症、糖尿病、大腿骨頭壊死症、動脈硬化症の誘発や、免疫抑制薬による感染症、悪性腫瘍の誘発などが大きな問題となってきています。


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8. 膠原病の新しい治療


膠原病の本当の原因は、いまだ完全には分かっていませんが、膠原病の発症メカニズムが次第に解明され、このような知見に基づく新しい治療方法が開発されています。

関節リウマチでは、TNF-αに対するモノクローナル抗体(infliximab,Remicade)や、可溶性TNF-αレセプター・IgG融合蛋白(etanercept,Enbrel)が開発され、我が国でもすでに大きな成果を上げています。

しかし、これらの進んだ治療でも100%の効果を上げることは出来ていません。
ヒトゲノムの解読が既に終了し、今後さらに病気の発症や治療反応性に関わる遺伝子が解明されれば、患者さんの個性に合わせたオーダーメイド医療が実現する可能性があります。

膠原病のより根本的な原因や病態に対処する有効な治療法が確立されれば、膠原病の生命予後と生活の質(QOL)はさらに向上することが期待されます。

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