京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学

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京大病院 血液・腫瘍内科における同種造血幹細胞移植の適応

非寛解症例または合併症・併存症を有する症例に対する適応

個々の疾患についての移植適応はこちらのページをご覧ください。
本ページでは,1)非寛解期の移植,2)PSの悪い症例,3)感染症の合併例,4)臓器障害のある場合,5)他の癌が併存している場合の適応についての考えを記載します。

1)非寛解期の移植
非寛解と一口に言っても患者さんごとに病状はさまざまで,原疾患の病勢,強力な骨髄破壊的前処置に耐えうるか,移植ソースなどを総合的に考慮し,移植の適応を判断する必要があります。

非寛解期急性白血病に対する前処置は骨髄破壊的な前処置が必要であり,AMLでBMT/PBSCTの場合はCY/TBI,CBTの場合はCA/CY/TBIを基本とし,ALLではVP16/CY/TBIを基本とします。骨髄中の芽球割合が50%を超え,急速に芽球が増加するような病勢が強い場合,60才以上であったり,臓器障害があったりして骨髄破壊的前処置が不可能な場合は移植の適応外と考えます。芽球の急速な増加の定義は明確ではありませんが,白血球数や芽球が日単位で増加する場合は該当するものと考えます。Reduced-toxicity myeloablative conditioningであってもJHSCT研究会のG-CSF-combined AraC併用Flu/Bu4や虎ノ門病院のFlu/BU4/Melなどのレジメンは,非寛解でも成績が良好な可能性はありますが,TRMも多く,確立した治療法ではなく,あくまで臨床試験の枠組みで行われるべきです

非寛解期 AMLについて,CY/TBIを前処置として行ったBMT/PBSCTの日本における成績は,長期生存率が20%です(図1)。年齢が60才未満で,PSが良好で,臓器障害がなく,活動性の感染症がなければ,リスクを十分に説明し,患者さんがリスクを理解した上で治療を希望されれば移植を考慮しても良いと思います。CBTについては,日本における成績で長期生存率が30%であり(図2),CBTも非寛解期AMLに適応があると考えられます。単純な比較ではCBTの方がBMT/PBSCTより長期生存率が良好ですが,これはCBTの方が移植時期の条件が良いためと考えられることから,CBTを優先して推奨することはしません。ただし,BMT/PBSCTあるいはCBTのどちらにおいても,急速な芽球の増加,骨髄中芽球割合が50%以上,染色体異常がmonosomal karyotypeまたは複雑核型,FLT3/ITD陽性(FLT3/ITD検査は保険適応あり)のいずれかがあれば,移植を行っても長期生存の可能性は非常に低く(図3),強い副作用に苦しんだあげくに合併症あるいは原疾患によって命を失ってしまうことが多いことを十分患者さんに理解いただく必要があります。このような症例においては,特に骨髄バンクドナーからの移植は倫理的な問題がある可能性があり,骨髄バンクドナーからの移植は行わないのがよいと考えられます。

図1 AML, non-CR, BMT/PBSCT
AML_BMT_PBSCT.png

図2 AML, non-CR, CBT
AML_CBT.png

図3 AML診断時の細胞遺伝学的表現型と移植成績
AML_karyotype.png
図3 造血細胞移植学会WGの二次調査の解析。2006年1月から2010年12月にAMLに対して初回同種造血幹細胞移植を受けた16歳以上の症例。AML診断時の細胞遺伝学的表現型を4群に分類し,初回同種造血幹細胞移植の成績との関連について後方視的に解析。Unfavorable-2のmonosomal karyotypeは再発率が極めて高く,OS,PFSが低く,同種造血幹細胞移植を行っても予後が改善されないことが示唆される。Complex karyotypeはUnfavorable-1となり,monosomal karyotypeより成績は良い。


非寛解期ALLについてはAMLよりも成績が不良です。VP16/CY/TBIの前処置でも再発率が高く,特に骨髄中の芽球割合が10%を越える症例は適応外と考えます。

悪性リンパ腫については,非寛解期のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)はほとんど長期予後が見込めないことから適応外と考えています。T細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫などの低悪性度リンパ腫ではGVL効果が期待できることより,化学療法感受性があれば非寛解期でも移植を考慮します。CBTでも当科の成績では他の移植ソースと遜色ありません。

非寛解期の移植法について,double conditioningは確立されたものではなく,感染症やTRMのリスク増加につながることから,当科で症例ごとに議論して適応を決めます。ハプロ移植は当科では経験が少なく,初回移植では行わず,2回目以降の移植での適応としています。初回移植でハプロ移植を希望される場合は,他施設をご紹介します。

2)PSの悪い症例
PSが3,4の症例は基本的に移植適応外と考えます。

3)感染症の合併例
基本的に感染症がコントロールできていない症例は移植の適応はありません。真菌感染症については,十分にコントロールされていれば,抗真菌剤の二次予防を行いながら移植は可能です。

4)臓器障害のある場合
心機能低下例で輸液負荷で容易に心不全になる症例は適応外です。その他の臓器障害については,当科で症例ごとにカンファレンスで検討して適応を決定します。
呼吸機能障害がある患者さんにTBIを行う場合は,肺遮蔽が必要になります。肺遮蔽の準備には時間を要しますので,早めに放射線治療科に相談する必要があります。

5)他の癌が併存している場合
他の癌が十分にコントロールできていれば移植を考慮しても構いません。通常は併存癌の治療後2年以上再発していない場合とします。移植後の免疫抑制期に併存癌が急速に悪化するケースも報告されており,併存癌に活動性があれば移植の適応外です。ただし,限局性の病変で,手術や放射線治療により治癒が十分に見込める場合は,移植を検討します。

6)複数回移植の適応
前回の移植から再発までの期間,移植時の病期,染色体異常が予後に関与します。前回の移植から再発まで1年以上経過し,移植時病期がCRで,PSが良好であれば再度の移植を考慮します。移植前処置はreduced-intensity conditioning (RIC)あるいはreduced-toxicity myeloablative conditioning (RTC)になります。

2015年11月1日第1版作成
2015年11月22日第1.1版作成
2015年12月6日第1.2版作成
2015年12月30日第2版作成