食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明【平成22年度 新学術領域研究(研究領域提案型)】

領域代表の挨拶

飽食の今日、肥満が世界的に蔓延しており、それ
と共に糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病
が増加している。肥満は脂肪細胞に脂肪が過剰に蓄
積した状態と定義されるが、過剰に摂取されたエネ
ルギーは脂肪細胞のみならず、肝臓、骨格筋、膵臓
などの非脂肪細胞にも蓄積される(異所性脂肪蓄積)
。肥満とそれに伴い増加する生活習慣病の重積の機
序として、食欲及び脂肪細胞と非脂肪細胞における
脂肪蓄積の制御の破綻による細胞機能異常が想定さ
れる。それに起因してインスリン抵抗性、アディポ
サイトカインの分泌及び感受性の変化、慢性炎症、
臓器連関の破綻などの過剰脂肪蓄積に基づく多彩な
機能異常が集積する。非脂肪細胞における脂肪蓄積
の制御の破綻による細胞機能異常である狭義の脂肪毒性(Lipotoxicity)に対して、非脂肪細胞のみならず脂肪細胞における脂肪蓄積制御の破綻を含む種々の機能異常の重積する病態を広義の脂肪毒性(Adipotoxicity)として、包括的に解明することが求められている(Nature Clin Pract Endocrinol Metab 2: 63, 2009)。一方、摂食障害等による「痩せ」を呈する疾患(カヘキシア、中枢性摂食異常症など)も社会的な問題になっているが、これも食欲と脂肪蓄積の制御の破綻に起因しており、病態の分子基盤の解明が必要である。

本領域は、上記のような広範な分野に渉る広義の脂肪毒性に関連する、多分野の専門家である11名の計画班員により、A01 「食欲と脂肪蓄積の制御における分子基盤の解明と新規関連因子の探索」とA02「食欲と脂肪蓄積の制御の破綻における分子基盤の解明」の2項目から成る融合的な新学術領域を組織しています。また、2年目からは公募研究として、領域の発展、融合、連携へ寄与することが期待される若手研究者による独創的で挑戦的な課題も28課題と多数加わっていることから、若手育成につながるものと確信しています。

本領域では上記39名の研究者間の緊密な連携により、エネルギー代謝調節の基本的な構成要素である食欲及び脂肪細胞と非脂肪細胞の脂肪蓄積を制御する臓器間の機能連関(メタボリック ネットワーク)に関して、その生理的な分子基盤と新規因子の同定と意義を解明するとともに、その破綻における分子基盤の解明を行うことにより、広義の脂肪毒性(Adipotoxicity)の全貌を解明する。さらに本研究は、肥満のみならず、痩せの病態の分子基盤の解明も併せて行うことにより、本領域の最終目標である食欲と脂肪蓄積制御の分子機構の解明により、肥満による生活習慣病や「痩せ」を呈する疾患の消滅に繋げたい。

                              
領域代表者   寒川 賢治(国立循環器病研究センター研究所 所長)



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