周産期研究室

研究内容

周産期領域の臨床に役に立つ発見を世界に発信し、周産期医療の向上に寄与することを目指し主に下記の研究を行っています。

  1. 妊娠高血圧症候群の病態解明および治療法の開発
  2. 前期破水に対する新規治療法の開発
  3. iPS細胞を用いた絨毛細胞の分化機構の解明・胎盤機能再生療法の開発
  4. 分娩後子宮出血に対する新規バルーンタンポナーデシステムの開発

1. 妊娠高血圧症候群の病態解明および治療法の開発

妊娠高血圧症候群 (Hypertensive Disorders of Pregnancy; HDP)は妊娠中に高血圧、尿蛋白を生じる予後不良な妊娠合併症です。実際の臨床では、肺水腫、脳出血、常位胎盤早期剥離、HELLP症候群を併発し母体の生命を脅かすもの、また重度の胎児発育不全を伴い児の予後が不良なものなどHDPの表現型は多様であり、周産期医療では最も研究が必要とされる疾患です。
HDPは病的胎盤から有害な因子が放出され母体血管内皮を障害することで発症するとされており、近年、その基礎研究は胎盤を中心に行われてきました。我々も、HDPの胎盤に特異的な複数のpathwayを同定し、そのうちソニック・ヘッジホッグ pathway活性が重度の胎児発育不全を伴うHDPの症例で有意に低下していることを見出しました。これらのデータは、胎盤のゲノム情報はHDPの表現型を反映することを示唆しています(図1)。当研究室は、胎盤のオミックス(Omics)情報を集積し、母体・胎児の予後、薬剤の治療効果が予測可能なバイオマーカーを探索することを目指しています。

2. 前期破水に対する新規治療法の開発

前期破水は早産の大きなリスクファクターです。早産は出生児に合併症・後遺症を残し、医学的・社会的に大きな問題となっています。一方で、妊娠中期の感染を伴わない前期破水は、ごくまれに自然治癒することが臨床的経験されますが、そのメカニズムは全くわかっていません。当研究室では、羊膜を中心とした卵膜の再生機構、治癒のメカニズムを解明することを目的とし、特にマクロファージを中心とした自然免疫機構による創傷治癒に着目して研究を進めています(図2)。将来的には「破水の治療」という新しい観点から早産の治療方法を開発することを目指しています。

3. iPS細胞を用いた絨毛細胞の分化機構の解明・胎盤機能再生療法の開発

胎盤の機能不全は胎児発育不全、あるいは妊娠高血圧症候群の発症原因として非常に重要です。我々は、iPS細胞を用いて機能的なヒト胎盤を創生し、胎盤機能不全に対する「胎盤機能再生医療」を開発し実臨床へ展開するための基礎的研究を行っています。

4. 分娩後子宮出血に対する新規バルーンタンポナーデシステムの開発

子宮用止血バルーンは分娩後出血の止血法として近年急速に普及していますが、奏功せず、時として子宮摘出や母体死亡に至る例もあります。我々は、その原因を克服し、誰でも容易に確実な止血を得ることができる子宮用止血バルーンの開発に取り組んでいます。

活動風景

京都大学医学部附属病院産科婦人科