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S5

講義 膵臓・胆道の外科

20051024

 

膵臓・胆道の解剖

 

 

 

胆嚢・肝外胆管

*              胆嚢・肝外胆管の生理機能

単層円柱上皮

粘膜筋板を欠く

胆汁の貯蔵と濃縮を行なう。CCKによって胆嚢が収縮して胆汁を放出する。粘膜固有層からすぐに筋層へ続く

ロキタンスキー・アショフ洞 sinus of Rokitansky-Aschoff :胆嚢において 上皮が粘膜固有層や筋層にまで落ち込んでできたくぼみ。菌の温床なるため胆嚢炎の母地となる

Hartmann's pouch :胆嚢体部と頸部のあいだにある漏斗状部

 

*              胆嚢・肝外胆管疾患の診断法 PTC, ERCP

間接法:経口法oral cholecystography),胆管の描出は不良であり、主な目的は胆嚢の描出。ヨード製剤。 ビリルビン値が3mg/dl以上の黄疸例では造影剤の胆汁中への排泄が障害される

間接法:造影剤を静脈経由で投与し、造影剤が胆嚢で濃縮される像を描出する。 ただし胆道に狭窄を生じている場合や胆嚢粘膜の損傷のために濃縮力が低下している場合には 胆嚢は描出されない。DIC (drip infusion cholangiography)

直接法:胆道に直接に造影剤を注入して観察する.

PTC (Percutaneous Transhepatic Cholangiography):エコーやCTガイド下で針を経皮的に肝内の胆道に挿入し、水溶性の造影剤を注入して胆道を造影する。閉塞性黄疸の診断

内視鏡的逆行性胆管膵造影法 ERCP (Endoscopic Retrograde Cholangio-Pancreatography)

超音波内視鏡 EUS (Endoscopic Ultrasonography)

 

*              胆嚢・肝外胆管の奇形

*              胆嚢の奇形

*              胆管の奇形

 

*              胆嚢・肝外胆管の損傷

 

 

胆石

*              概念 :胆道系に結石が生じたもの。肥満の中年女性に好発する。

*              胆石の分類

コレステロール胆石 :全体の70%程度を占める。 純コレステロール石 =コレステロールを主成分とする胆石で、割面が放射状を呈する。

混成石 =割面で明らかに内層と外層を区別できる胆石である。胆嚢に単発することが多い。

混合石 =割面にて放射状構造と層状構造が混在しているものをいう。

ビリルビン胆石,色素胆石 pigment stone =全体の30%程度を占める。 黒色石 =ビリルビンの重合体で構成される。

ビリルビンカルシウム石=まず溶血性貧血などによって肝内にてビリルビン結石が形成される。 合併した細菌感染によって細菌の持つβグルコニダーゼの作用で脱抱合化がなされるとカルシウムと 結合してビリルビンカルシウム石がビリルビン結石のまわりに形成される。

その他 =炭酸カルシウム石 ,脂肪酸カルシウム石

 

*              病因

コレステロール胆石の場合 =胆汁酸と lecithin の供給不足もしくはコレステロール合成の亢進に起因する。

色素胆石の場合 =ビリルビンカルシウム石は溶血性貧血などによる遊離型ビリルビンの増加に起因する。

 

*              原因

胆汁鬱滞

肝硬変

胃切除術後 =迷走神経が切断されると胆嚢の弛緩を生じ、胆汁鬱滞によって細菌感染を合併する。 したがって組成としてはビリルビンカルシウム石が多い。

溶血性貧血

クローン病 =回腸がおかされると胆汁酸の腸管循環が障害されて胆石を生じやすくなる。

 

*              症状 :多くは無症状である。

Charcotの三徴 =発熱・腹痛・黄疸を呈する。

胆石疝痛発作 biliary colic =激烈な上腹部痛が発作的に生じ、しばしば右肩や背部に放散する。

Murphy徴候 =右季肋部を圧迫したまま深呼吸させると、痛みのために途中で呼吸が停止する。

 

*              検査所見

腹部エコー =高エコーな胆石のあとに音響陰影 acoustic shadowing が見えることが特徴的である。 特にコレステロール結石で顕著である。 なお胆嚢周囲に嚢胞が見える場合は急性胆嚢炎を合併している。

間接胆道造影法

静脈性胆道造影

排泄性胆道造影法

 

*              合併症

急性胆嚢炎

胆道感染

胆嚢水腫 =胆石嵌頓によって胆嚢頸部の閉塞が長く続いたために胆嚢内の胆汁の色素が吸収され、胆嚢内に無色の白色胆汁が 充満している状態である

胆石イレウス =内胆汁瘻から腸管内に脱出した巨大胆石によるイレウスである。通常、回盲弁で嵌頓する

胆嚢癌

急性膵炎 =胆石が総胆管と膵管の合流部である共通管に嵌頓すると、オッデイ括約筋の逆流防止機能が障害されて胆汁が膵管内に逆流する(胆汁逆流説)。胆汁は膵液内のホスホリパーゼA2の活性を増強させ、細胞膜を障害する。

 

*              治療

非観血的治療

経口的胆石溶解療法 =コレステロール胆石に対して胆汁酸の一種であるウルソデオキシコール酸を投与する。 大きくないコレステロール結石で壁から遊離しているタイプが適応となる。

体外衝撃波胆石破砕療法 extracorporeal shock wave lithotripsy, ESWL =破砕後は経口胆石溶解剤にて溶解することが必須であるため、その適応はコレステロール胆石に限定される。

内視鏡的乳頭括約筋切開術 EST Vater乳頭を切開し、この部より内視鏡を挿入し、カテーテルを用いて胆管内の結石を除去する。

内視鏡的砕石術 ,経皮経肝的内視鏡下結石除去術 =肝内結石が適応となる。

 

観血的治療

開腹手術 =胆石生成の場を摘出することが目的であり、胆嚢胆石では胆嚢を、肝内胆石では肝葉切除が施行されることもある。

腹腔鏡下胆嚢摘出術 laparoscopic cholecystectomy

 

 

 

総胆管結石

肝内結石

肝管合流部よりも肝側の肝管、肝内胆管に結石。 拡張した肝管に胆汁が鬱滞し、そこに感染が成立して生じるので、大部分はビリルビンカルシウム結石である。

治療 :内視鏡的治療 ,開腹術 ,肝葉切除術

 

無症状胆石

 

 

 

 

胆嚢・肝外胆管の炎症性疾患

 

急性胆嚢炎

*              原因 :ほとんどが Hartmann's pouch あるいは胆嚢管に胆石が嵌頓し、濃縮された胆汁が胆嚢粘膜を障害する。

*              症状 :発熱などの炎症症状を伴なう。 Murphy =右季肋部を圧迫したまま深呼吸させると、痛みのために途中で呼吸が停止する。 腹膜刺激症状 ,筋性防御 胆嚢穿孔から腹膜炎に進展したことを示唆する。

*              検査所見

腹部エコー =壁が高エコー、胆嚢の内腔が拡大,胆嚢の腫大,胆石の胆嚢頸部嵌頓像 胆嚢内浮遊物 debris ,胆嚢周囲液体貯留 fluid collection

腹部単純X線所見 =胆道内ガス像 pneumobilia =胆嚢から隣接臓器への穿通(内胆汁瘻)が起こると、胆道内に腸管内ガスが逆流するために、胆道内にガス像を認 める。

*              合併症

気腫性胆嚢炎 emphysematous cholecystitis =ウェルシュ菌 clostridium perfringens などのガス産生菌の感染によって胆嚢壁内にガス像が出現するもの。穿孔して敗血症に移行しやすい。糖尿病に合併。

汎発性腹膜炎 =胆汁が腹腔内に散布されて生じる。

治療 =腹膜炎に進展したものは手術適応となり、開腹術による胆嚢摘出術が原則である。 腹腔内ドレナージ

 

無石胆嚢炎

 

慢性胆嚢炎

*              概念 :胆石症に合併した胆嚢炎であり、しばしば胆嚢周囲に膿瘍を形成する。

*              原因 :胆石症

*              検査所見

腹部エコー sandwitch sign =壁内に透明帯 sonolucent layer が出現し、壁が三層に見えること。

陶器様胆嚢 porcelain gallbladder =慢性炎症によって胆嚢壁全体に石灰化がみられるものであり、慢性胆嚢炎の末期を表わす。

*              治療 =胆嚢腺筋症を合併した場合は胆嚢癌との鑑別が困難であるため、原則として胆嚢摘出術を行なう

 

急性胆管炎

*              症状

Charcotの三徴 =発熱・腹痛・黄疸

Reynolds の五徴 Charcotの三徴に加えて、ショック症状・意識障害。

*              治療 :まず減圧する

 

胆嚢・肝外胆管の良性疾患

胆嚢良性疾患

胆嚢ポリープ

*              概念 :胆嚢粘膜から出たポリープ様病変である。 多くはコレステロールポリープであるが、大きなものや急速に増大するものは胆嚢癌の可能性を否定できない。最大径が1cm以下の polypoid lesion の悪性率は6%11.5cmでは24%1.52cmでは62%と言われる。

*              種類

コレステロールポリープ cholesterol polyp =単純CTでは胆汁とほぼ同じ吸収値を示すため、検出できない。

過形成性ポリープ hyperplastic polyp =形態的には癌との鑑別は困難である。

炎症性ポリープ inflammatory polyp =胆嚢炎に続発するポリープの総称である。

*              検査所見 :胆嚢エコー =高エコーが多発するが、ASは見られない。

*              治療 1cm以上であれば胆嚢癌も可能性もあり、胆嚢摘出術の適応となる

 

胆管良性疾患

良性胆管狭窄

 

 

胆嚢・肝外胆管の悪性疾患

胆嚢癌

*            概念 胆嚢に原発した腺癌で、高齢女性に多い。胆嚢内隆起性病変を形成し、胆管を圧迫すると黄疸を生じる。 胆嚢壁は粘膜筋板を欠き、リンパ管に富むため、容易に周辺臓器やリンパ節転移を起こしやすい。

*        原因

胆石症,胆嚢結石 =特にコレステロール結石が多い。胆石によって生じた慢性炎症が上皮の異形成をもたらすと考えられている。

膵胆管合流異常 =膵液の逆流によって胆嚢の粘膜の化生を来たす。なかでも胆道非拡張例に多い。

*        症状: 胆石や胆嚢炎などの合併症による症状が多い。 右季肋部の腹痛 発熱 黄疸

*            検査所見 :腹部エコー =胆嚢内隆起性病変として描出される。胆石と異なり、表面不整な腫瘤影が胆嚢壁から突出した所見を得る。 胆嚢ポリープとの鑑別は困難であるが、径が1cmを超えるものや広基性のものは癌の疑いが強い。 超音波内視鏡

*            治療 リンパ節郭清が必要となるので腹腔鏡下ではなく、原則として開腹手術を行なう

 

胆管癌

*        概念 :胆管癌とは肝外の胆管上皮細胞に原発する癌腫であり、男性の下部胆管に多い。ほとんどが腺癌である。

*        種類 :総胆管癌

*        症状 :腹痛,腹部膨満,黄疸,発熱を来たす.Courvoisier徴候

*        検査所見

ERCPPTCによる挟み打ち造影により病巣部位を把握する。

超音波検査

腫瘍マーカー CEA CA19-9

ALP =肝胆道系酵素として閉塞性黄疸の際に上昇する。

*        治療

上部胆管癌 =肝門部切除あるいは肝葉切除が基本となる。

中部胆管癌 =肝門部肝切除と膵頭十二指腸切除術を行なう。

下部胆管癌 =膵頭十二指腸切除術が基本となる。

 

十二指腸乳頭部癌

*        概念 :十二指腸乳頭部に原発する癌。 早期より黄疸などの症状が出現し、切除しやすいため予後良好である。 潰瘍形成は予後不良.

*        症状

早期より黄疸

Courvoisier徴候

*        検査所見

便潜血陽性

変動する高ビリルビン血症

低緊張性十二指腸造影 hypotonic duodenography =乳頭部の不整像や腫瘤陰影

*        合併症 :膵炎

*        治療 膵頭十二指腸切除術 pancreatoduodenectomy

 

胆嚢・肝外胆管の手術

*        胆(嚢)摘(除)術

*        腹腔鏡下胆嚢摘除術

*        胆管切除術

*        総胆管切開

*        総胆管切開およびTチューブまたはCチューブドレナージ

*        胆汁ドレナージ

*        胆嚢外瘻術

*        胆管外瘻術

*        肝内胆管外瘻術

*        経皮経肝的胆道ドレナージ PTBD

*        経皮経肝的胆管ドレナージPTCD

*        経皮経肝的胆嚢ドレナージPTGBD

*        内視鏡的逆行性胆道ドレナージ ERBD

*        内視鏡的経鼻胆道ドレナージENBD

*        外瘻造設術

*        乳頭括約筋切開術


Roux-en-Y 肝管空腸吻合

 

 

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膵臓

 

膵臓の解剖・発生

*        概念

L1L2の高さで、胃の背面を横に走り、後腹壁に接着する。

膵頭 膵体 膵尾 主に内分泌機能を営む。

脈管 動脈 膵頭部は胃十二指腸動脈および上腸間膜動脈から、膵尾部は腹腔動脈・上腸間膜動脈・総肝動脈などから栄養される。

主膵管 duct of Wirsung 膵臓の導管の主管であり、終りは総胆管と合して大十二指腸乳頭に開く。 副膵管,Santorini

 

 

 

膵臓の機能

膵疾患の診断の手順

膵臓の奇形

*        輪状膵

*        迷入膵(副膵,異所性膵 aberrant pancreas

Heinlich分類

I: 膵島、腺房細胞、導管を有す.

II: 腺房細胞、導管を有する

III: 導管のみを有する(もっとも多い)

症状 :一般に無症状である。

*        膵管胆道合流異常

概念:膵管と胆管が十二指腸乳頭括約筋の支配を受けないで十二指腸の壁外で合流している先天的な発生異常をいう。 東洋女性に多い。

病態生理:十二指腸乳頭括約筋の支配を受けないため、胆管に膵液が逆流したり、あるいは膵管に胆汁が逆流し、胆管拡張症・ 胆管炎・閉塞性黄疸・急性膵炎などさまざまな病態を惹起する。

合併症:先天性胆道拡張症,胆管癌(胆道拡張を伴なう症例に多い),胆嚢癌 (胆道拡張を伴なわない症例に多い)

治療:外科切除が原則となる。

 

総胆管拡張症

*        概念 :先天性胆道拡張症のひとつであり、先天的に総胆管が嚢状に拡張した疾患である。 アジア、なかでも日本に多い。

*        原因:膵管胆管合流異常による膵液逆流説が通説である。

*        症状 30歳までに発症することが多い。 腹痛,黄疸 ,上腹部腫瘤

*        検査所見 :腹部エコー,総胆管の拡張を認める。 ERCP所見 =総胆管の拡張および胆管膵管合流異常が認められる。

*        合併症 :急性膵炎 ,胆道系悪性腫瘍 ,胆嚢癌 ,胆管癌

 

膵管癒合不全(divism

 

膵損傷

*        概念 :膵臓は後腹膜臓器であるため比較的損傷を受けにくい臓器ではあるが、後腹膜に固定されているため移動性に乏しく、 腹壁からの外力で脊椎に挟まれて高度の損傷を受けることがある。

*        症状 :しばしば重大な膵損傷があっても合併損傷臓器による症状に隠されてしまう。 ショック症状 =出血性ショックあるいは急性膵炎によってショックに陥る。

*        検査所見 :腹部CTが有効。

*        合併症 :仮性膵嚢胞 ,膵膿瘍

*        治療

開放性損傷では全例が手術適応となる

非開放性損傷では総合的に開腹術の適応を決定する。 開腹術 =止血・壊死組織除去・膵液のドレナージ。

 

 

膵炎

*        急性膵炎

*        慢性膵炎

 

急性膵炎

*        概念 :膵臓腺房細胞の障害によって消化酵素が流出する、外分泌組織の急性炎症である。中高年の男性に好発する。 ほとんどが自然治癒するが、MOFDICなどの重篤な合併症を来たすことがある。 特に感染や血腫を合併した場合は外科手術の適応となる。

 

*        病因

アルコール

胆石症 :胆石が総胆管と膵管の合流部である共通管に嵌頓すると、オッデイ括約筋の逆流防止機能が障害されて胆汁が膵管 内に逆流する(胆汁逆流説)。緊急手術の適応となる。

薬剤

フロセミドなどの利尿剤

テトラサイクリンなどの抗生物質

エストロゲン

ERCP:過度な造影剤の注入は急性膵炎を惹起するため禁忌である。

高脂血症

高カルシウム血症 :膵管にカルシウムが沈着して閉塞を来たす。

腹部外傷

 

*        症状

急激な心窩部痛。 心窩部の腹痛

Cullen(カレン)徴候:膵臓周辺に染み出た血性滲出液が皮下に移動し、臍周辺の皮膚が暗赤色に染まる。 DICを合併しやすい徴候である。

Grey-Turner徴候 :側腹部の皮膚着色斑をいう。

食欲不振 :膵外分泌不全による消化機能障害に起因する。

低カルシウム血症 :テタニーによる腹痛やTrousseau徴候・Chvostek徴候が出現する。

*        検査所見

尿中アミラーゼの増加

血液検査

炎症所見

血小板減少

低カルシウム血症

高窒素血症

高血糖

高脂血症

逸脱酵素の増加

血清アミラーゼ高値

血中エラスターゼ高値

LDH上昇

腹部CT所見

急性期の重症度判定に有効であり、膵腫大・内部不均一・滲出液貯留の項目で判定する。

膵腫大

滲出液貯留 pancreatic ascites

後腎傍腔への液体貯留 fluid collection

胸水貯留

腎筋膜の肥厚

膵仮性嚢胞 pancreatic pseudocyst

腹部X線所見

sentinel-loop sign :階段状の niveau を持った小腸イレウス像が膵臓を取り囲むように映る。

colon cut-off sign :膵臓に接した横行結腸が蠕動運動を低下させたために、横行結腸内に見られたガス像が脾彎曲部において突如と して途切れる。

腹部エコー

浮腫状に腫大した膵臓

*        合併症

早期合併症

閉塞性黄疸

汎発性腹膜炎

多臓器不全 MOF

DIC

後期合併症

膵仮性嚢胞pancreatic pseudocyst :感染によって膵膿瘍に移行.特に5cm以上の嚢胞は減圧術の治療の対象。

膵膿瘍 :嚢胞への感染によって形成され、緊急に開腹ドレナージの必要。

 

急性膵炎の治療

*        概念

原則として内科的治療で対処する。

*        外科治療

感染を合併した場合や血性滲出液によって血腫を形成した場合は保存療法が無効なため、外科手術の適応となる。 また胆石症によって急性膵炎となった場合も、手術によって緊急に胆石の嵌頓を解除する必要がある。

膵部分切除術

膵壊死部摘除術 ネクロゼクトミー

ドレナージ :術後に開腹創を閉鎖せずに感染巣の浄化を徹底するために行なう。

 

慢性膵炎 chronic pancreatitis

*        概念 :長期間の炎症によって膵実質細胞が破壊され、膵臓の線維化が起こったもの。 初期には外分泌能が障害され、進行すると内分泌能も障害されて糖尿病を合併する。

*        病因

アルコールの多飲,男性に多い。

特発性,特に女性に好発。

胆石症

急性膵炎から発症することはまれ

*        症状

心窩部痛

吸収障害

下痢と体重減少

脂肪便 steatorrhea

糖尿病症状

*        検査所見

腹部単純X線写真 :進行例では膵臓の石灰化像(膵石)が見られ、確定診断となる。

腹部CT所見 膵石や膵臓の石灰化が見られ、膵臓全体は萎縮している。 仮性膵嚢胞

ERCP :膵癌との鑑別が困難な症例に施行される。 典型的には拡張した膵管が蛇行し、そのなかに膵石や protein plug が見られ、確定診断となる。膵癌では閉塞部位よりも下流の膵管は正常。

膵臓の逸脱酵素 血清リパーゼ上昇 ,血清トリプシン減少 20mg/dL以下の所見は慢性膵炎に特徴的である。

膵外分泌機能検査

セクレチン検査

BT-PABA試験

糞便中脂肪定量

経口ブドウ糖負荷試験 OGTT

*        合併症

糖尿病

膵仮性嚢胞

膵石,膵石灰化

*        治療

内科的治療

低脂肪食

胃酸分泌抑制薬

 

*        外科手術

膵管減圧術

膵管空腸吻合術 Roux-en-Y膵管空腸側々吻合)

膵管開口部形成術

膵切除術

病変が限局している場合に適応となる。

膵部尾側切除術

膵頭十二指腸切除術

 

慢性膵炎の手術 Roux-en-Y膵管空腸側々吻合

 

膵石,膵石灰化

*        概念

慢性膵炎の合併症として特徴的である。その主成分は炭酸カルシウムである

 

 

膵嚢胞(仮性嚢胞,真性嚢胞)

 

*        仮性膵嚢胞 :内腔が上皮ではなく結合組織で覆われるもので、真性嚢胞に比べて圧倒的に多い。 しばしば急性膵炎が原因となり、自然に消失することが多い。

*        真性膵嚢胞 :内腔が上皮で覆われるもので、上皮から癌化することがある。

 腫瘍性嚢胞=腺房細胞や膵管上皮細胞を発生母地とする腫瘍。 嚢胞腺腫 cystadenoma solid and cystic tumor ,嚢胞腺癌

非腫瘍性嚢胞 =先天性嚢胞 ,貯留嚢胞,鬱滞嚢胞 ,寄生虫性嚢胞,真性嚢胞は癌化する危険があるため、原則として外科的に切除する

 

 

膵腫瘍

*        浸潤性膵管癌(予後不良,膵腫瘍の90%以上)

*        膵管内乳頭粘液性腫瘍(腺腫・腺癌)(IPMN)

*        漿液性嚢胞腺腫(SCT)

*        粘液性嚢胞腫瘍(腺腫・腺癌)(MCN)

*        腺房細胞腫瘍

*        内分泌腫瘍

 

膵臓の腫瘍

*        良性腫瘍

漿液性嚢胞腺腫(SCT

膵管内乳頭粘液性腺腫(IPMNの良性)

粘液性嚢胞腺腫 MCNの良性)

膵内分泌腫瘍の良性のもの

 

*        悪性腫瘍

膵癌

膵管癌ductal cell carcinoma

膵管内乳頭粘液性腺癌IPMNの癌)

粘液性嚢胞腺癌(MCNの癌)

腺房細胞癌, acinar cell carcinoma

膵内分泌腫瘍の癌islet cell carcinoma

グルカゴノーマ glucagonoma

インスリノーマ insulinoma

ソマトスタチノーマ somatostatinoma

ガストリノーマ gastrinoma Zollinger-Ellison症候群

未分化癌

 

 

膵頭部癌 carcinoma of the head of the pancreas

*        概念

膵頭部に発生する癌腫であり、多くは膵管上皮細胞から発生する膵管癌である。

*        症状

黄疸

上腹部痛

Courvoisier徴候

*        検査所見

内視鏡的逆行性胆道造影 ERCP :膵管の壁不整や閉塞が見られる。膵液貯留によって膵管の拡張が見られる。 総胆管を閉塞すると拡張した総胆管が認められる。

腹部CT所見 :膵頭部が腫大し、腫瘤は形状が不整で内部不均一である。

腫瘍マーカー CEAをはじめ CA19-9 DUPAN-2 の上昇が見られるが、早期には陽性になりにくく、陽性になって時点では治癒が 不可能なことが多い。

血管造影所見:無血管野 avascular area ,病巣には血管が乏しく、病巣周囲では腫瘤による血管の圧排が見られる。

逸脱酵素 :血清アミラーゼ高値

*        治療

外科的切除

膵頭十二指腸切除術 pancreatoduodenectomy :膵頭部切除と十二指腸全摘に加えて胃亜全摘・総胆管切除・胆嚢摘出を行なう。 本症をはじめとして、十二指腸乳頭部癌や下部胆管癌などが適応となる。

 

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膵頭十二指腸切除術PD

 

Whipple手術(1943年)

 

 

 

 

 

 

膵体尾部癌 carcinoma of the body and tail of the pancreas

*        概念

膵頭部癌と比べて症状が不定で、診断された時点ですでに切除不能な症例が多い。

*        症状

上腹部痛あるいは背部痛が主な症状となる。膵頭癌と異なり、黄疸は生じにくい。

*        検査所見

腹部血管造影 :脾動脈抹消に不整な狭窄像 encasement が見られる。

ERCP所見 :膵管の閉塞や閉塞より抹消側膵管の拡張が見られる。

治療

 

膵体尾部切除術

 

 

 

膵内分泌腫瘍 Islet cell tumors of the pancreas

*        概念

膵内分泌器官に原発した腫瘍で、良性・悪性の別を問わない。

*        種類

インスリノーマ

ガストリノーマ

グルカゴノーマ

ソマトスタチノーマ

WDHA症候群, VIPoma

*        多発性内分泌腺症,MEN

*        検査所見

血管造影所見 :膵癌と異なり、造影にて濃染される。

 

インスリノーマ insulinoma

*        概念

膵臓β細胞に由来し、インシュリンの過剰分泌により低血糖をもたらす膵内分泌腫瘍である。 膵内分泌腫瘍としては最も頻度が高いが、多くは単発性で悪性化傾向は低い。

*        症状

肥満 :慢性的な低血糖状態に置かれるため、過食して肥満となる。

Whippleの三徴

空腹時や運動時の意識障害 syncope

空腹時低血糖 hypoglycemia

ブトウ糖投与による劇的改善

慢性低血糖症

急性低血糖症のような著明な症状はなく、性格変化や異常行動などの精神症状を来たす。 インシュリノーマに典型的な症状である。

*        検査所見

絶食試験

血中Cペプチド高値

腹部CT所見 hypervascular の所見

*        治療

画像診断にて局在が明確であり腫瘤も単発性で小さいことが多いので、原則として腫瘍核出術を行なう。

外科的治療

腫瘍摘出術

腹腔鏡下摘出術

 

グルカゴノーマ glucagonoma

*        概念

ランゲルハンス島のα細胞に由来する、グルカゴン産生腫瘍である。

*        症状

糖尿病症状が主症状である

壊死性遊走性紅斑 necrolytic migratory erythema

口内炎

正球性貧血

*        検査所見

高グルカゴン血症

低アミノ酸血症

高血糖


ガストリノーマ Zollinger-Ellison syndrome,gastrinoma

*        概念

ガストリン産生腫瘍によってガストリンが過剰に分泌され、その結果、胃酸の過剰分泌によって吸収障害を来たした 疾患である。 腫瘍は多発性かつ悪性であることが多い。

*        病態生理

十二指腸潰瘍

難治性潰瘍

吸収障害

*        症状

空腹時の上腹部痛

水様性下痢

*        検査所見

ガストリン高値

セクレチン試験

基礎胃酸分泌量が上昇する。

消化管造影で潰瘍

*        治療

腫瘍切除術,薬物療法

 

WDHA症候群,VIPoma

*        概念

VIPホルモンを過剰に産生する膵腫瘍である。VIPはもともと膵臓のホルモンではないため、異所性ホルモン分泌腫瘍 である。

*        症状

水様性下痢

胃無酸症 achlorhydia

*        検査所見

VIP血症

低カリウム血症 hypokalemia

*        治療

外科療法

薬物療法 =ソマトスタチン誘導体を投与する。

 

ソマトスタチノーマ somatostatinoma

*        概念

ソマトスタチンの過剰分泌により糖尿病・下痢・胆石症などをきたす膵島腫瘍である。 高率に肝転移を生じる悪性腫瘍である。

*        治療

腫瘍が膵島に限局していれば外科的切除の対象となるが、多くの場合はすでに転移を完了しており、化学療法ならび に放射線療法が施行される。

 

 

膵の手術

*        膵嚢胞の手術

*        膵管消化管吻合術:膵管減圧術 decompression of the pancreatic duct,膵液流出障害を改善し、膵管内圧を低下させる目的で行なう。 主に乳頭部狭窄や主膵管狭窄を伴なう慢性膵炎が適応となる

*        膵切除術(PD,PPPD,DP,分節切除)

*        膵全摘術(TP)

 

PD=pancreatoduodenectomy

*        概念 :膵頭部切除と十二指腸全摘に加えて胃亜全摘・総胆管切除・胆嚢摘出を行なう。 十二指腸乳頭部癌をはじめとして、膵頭部癌・下部胆管癌などが適応となる。

膵頭部切除

十二指腸全摘

胃亜全摘 :幽門側胃切除を行なう。ただし近年では下部胆管癌や乳頭部癌では幽門輪温存が行なわれることがある。

総胆管切除 胆嚢摘出

*        再建法

Child :膵空腸端々吻合、胆管空腸吻合、胃空腸吻合の順で行なわれる。

Whippe (胆管,膵,胃)

Cattell (胃,膵,胆管)

今永法(胃,膵,胆管)

 

*        合併症

膵空腸縫合不全 ,致命的となりうる。

 

鏡視下膵体尾部切除術

 

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