2023年12月22日
(概略)
京都大学医学部附属病院(所在地:京都府京都市、病院長:髙折晃史、以下 京都大学病院)は、下肢閉塞性動脈硬化症※の患者に対するEIM-001※の有効性と安全性を検討する医師主導治験を開始しました。
EIM-001は、下肢への筋肉内投与で新たに血管を新生させることによる虚血症状の改善が期待できる薬剤です。本治験では、既存の治療方法では効果が十分に得られなかった患者、または既存の治療方法の適応とならない患者を対象とし、EIM-001またはプラセボ※を下肢に筋肉内投与することで、虚血症状の改善度合いや有効性を評価します。
既存治療では、治療後の血管の再狭窄や治療部位が限定されるなど課題も残されており、本薬物治療が既存治療のギャップを埋める新しい位置付けの治療法となることを目指して開発を行います。
【医師主導治験概要】
京都大学病院などにより、下肢閉塞性動脈硬化症と診断されたFontaine分類Ⅱb度(中等度)の患者を対象とした試験を2023年4月より開始しました。また、Fontaine分類Ⅲ/Ⅳ度(重度)の患者を対象とした試験を2023年10月より開始しました。ともに多施設共同試験で、現在症例登録を行っており、治験薬投与が始まっています。
対象となるのは以下の通り。(目標症例数は各試験40例。)
▼下肢閉塞性動脈硬化症と診断され、Fontaine分類Ⅱb度~Ⅳ度に属する患者
▼評価対象肢の浅大腿動脈、膝窩動脈、膝下動脈以下に狭窄又は閉塞病変を有する患者
▼血行再建術の適応が困難な患者又は、血管内治療又は外科的バイパス手術を施行したが効果が十分ではない患者
(用語説明)
※下肢閉塞性動脈硬化症(Lower extremity artery disease: LEAD)
末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease: PAD)とは、主に手足の血管が動脈硬化により狭くなったり閉塞したりすることにより、血流が悪化し様々な症状を引き起こす病気の総称です。なかでも下肢に生じるLEADが最も多いと言われており、中等度から重度の症状としては、痛みによる歩行障害、潰瘍や壊死が生じ、日常生活に大きく影響します。
LEADは、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などの動脈硬化のリスクファクターを有し、高齢化に伴い患者数は年々増加しています。その治療は、先ずリスクファクターに対する是正が行われます。続いて、運動療法及び薬物療法といった標準治療が推奨されます。それでも症状の改善が不十分である場合は、血管内治療や外科的バイパス術等の血行再建術が考慮されます。Fontaine分類は、下肢虚血の進行に応じた病態の重症度を4段階に分けて評価する際に使用するスケールです。
※ EIM-001
EIM-001の有効成分は、強力な血管新生作用を有します。本治験では、EIM-001を下肢に筋肉内投与し、新たに血管を新生させることで、LEADの虚血症状に対する作用を確認します。
※ プラセボ
EIM-001と外見上見分けのつかない、薬効成分の無いものです。