2024年9月30日
京都大学医学部附属病院泌尿器科(小林恭教授、北悠希助教)は、2024年5月に、同性パートナーをドナーとする生体腎移植を当院で初めて実施しましたので、その結果を報告します。
患者(レシピエント):京都市在住、女性
診断名:慢性腎不全(原疾患不明)
臓器提供者(ドナー):同性パートナー
日本における生体臓器移植は、日本移植学会倫理指針により、6親等以内の血族あるいは3親等以内の姻族でしか認められていません。今回のドナーとレシピエントは、同性パートナーとして京都市のパートナーシップ宣誓制度(注1)に基づき宣誓し、法律上の夫婦又は家族と同様に取り扱う行政サービスを受けていた間柄でした。レシピエントの慢性腎不全が進行し腎代替療法が必要となる中で、同性パートナーが自らの自由意思でドナーとなることを表明し、パートナー間での生体腎移植を希望されました。そこで、京都大学の医の倫理委員会および日本移植学会の倫理委員会の承認を受けたうえで、生体腎移植を実施いたしました。
2024年5月の手術は、ドナー腎採取術を増井仁彦(助教)、レシピエントの腎移植術を小林恭(教授)と主治医の北悠希(助教)が執刀しました。手術直後より移植した腎臓の機能は良好で、順調に尿を産生し始め、患者さんは血液透析から離脱されて、術後約3週間で自宅退院いたしました。ドナー、レシピエントともにすでに社会復帰されています。
注1 京都市パートナーシップ宣誓制度https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000272204.html
本事例は同様に移植医療の医学的対象となるが、性的少数者であるという理由でそれを享受できないと諦めている患者さんにとって有益な前例となる可能性があり、広報を通じて周知する意義があると考えました。
「当初はレシピエントの慢性腎不全が進行する中で、血液透析に今後の生活を頼るしか方法がないと思い心苦しく感じていた折に、何か行動をおこしてみようと決断し、京大病院様にパートナーシップ宣誓制度に基づく非親族間の生体腎移植の相談にのっていただき、今までの実施例がない間柄の手術にも関わらず、京都大学の医、および日本移植学会の倫理委員会の承認を得る事に尽力いただき、無事手術を受ける事ができました。
皆様のおかげで経過も良好で感謝しかございません。今回の移植の例を機に同様の境遇で移植ができないという判断の中で諦めていらっしゃる患者さんに、希望の光があたる事になれば嬉しく思います(原文まま)」