2024年10月2日
京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科の矢部大介教授らは、肝胆膵・移植外科と連携し、膵島移植が適応となる1型糖尿病患者さんを対象としたiPS由来膵島細胞シートの安全性を確認するための医師主導治験を2025年1月より当院にて開始することとなりました。
将来的に、糖尿病領域における移植医療のドナー不足解消に貢献し、患者さんの新たな治療選択肢となることを目指します。
1型糖尿病は、世界では800万人以上、日本でも10~14万人の患者さんがいると推計されています。そのうち10%程度は、血糖コントロールが不安定なBrittleタイプであり無自覚低血糖で死に至る危険性があります。膵臓及び膵島の移植は、これらの患者さんを対象としています。
膵島移植は2020年に保険収載され、わが国で公的保険を用いて受けることができるようになりましたが、慢性的なドナー不足により年間数例程度の移植にとどまっているのが現状です。また、膵島移植の場合、インスリン投与が必要なくなるインスリン離脱のためには複数回の移植が必要とされており、ドナー不足を解消するための新たな治療選択肢の開発が望まれていました。
iPICs注1)は「T-CiRA」注2)での研究を経て見出された―膵内分泌前駆細胞集団で、大量培養が可能です。このiPICsを糖尿病モデル動物に移植すると、血糖値が正常化し、有意な耐糖能注3)の改善を認めました。
本治験で使用するOZTx-410は、オリヅルセラピューティクス株式会社で開発したiPICsを均等に分散した薄層のシート状製品です。非臨床試験では、本品に起因する明らかな毒性や腫瘍化は認められておりません。そのため、膵島移植が適応となる1型糖尿病患者さんでも同様の効果がみられることを期待しています。今回の医師主導治験では、OZTx-410移植に伴うヒトでの安全性を評価することを目的としております。
令和6年8月1日 京都大学医学部附属病院治験審査委員会へ申請
令和6年8月23日 京都大学医学部附属病院治験審査委員会より承認
令和6年9月2日 PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に治験計画届書を提出
令和7年1月 治験開始(予定)
令和7年2月 1例目の移植開始(予定)
注1)iPICs:iPS 細胞由来膵島細胞(iPS cell-derived pancreatic islet cells)
注2)T-CiRA :京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業株式会社が2015年度から開始した共同研究プログラム
注3)耐糖能:血糖値を正常に保つ能力
治験責任医師:糖尿病・内分泌・栄養内科 教授 矢部 大介
実施診療科:糖尿病・内分泌・栄養内科、肝胆膵・移植外科(移植手術)
iPS細胞の提供:京都大学iPS細胞研究財団
治験製品(OZTx-410)提供:オリヅルセラピューティクス株式会社
本治験は、下記機関の支援を受けて実施されます。
・国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
橋渡し研究プログラム シーズF「iPS細胞由来膵島細胞を用いた1型糖尿病に対する細胞治療開発」
(代表:オリヅルセラピューティクス株式会社 伊藤 亮、橋渡し研究支援機関:京都大学)
・オリヅルセラピューティクス株式会社
本治験事務局:ipics※kuhp.kyoto-u.ac.jp
※を@に変更してください。
上記アドレスは、医師・報道機関からの問合せのみに対応しております。
京都大学医学部附属病院 臨床研究相談窓口
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
下記のHPにあるフォームからお問い合わせください。
https://iact.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/consultation
治験参加をご希望される場合には、通院中の医療機関の主治医に適格性の確認を行っていただく必要がございます。治験に参加頂ける可能性がある場合には、主治医から診療情報提供書をお送りください。京大病院の治験責任医師/分担医師が検討した上で、その後の進め方についてご連絡させて頂きます。