2025年4月15日
京都大学医学部附属病院は、「iPS細胞由来膵島細胞シート移植に関する医師主導治験」において1型糖尿病の第一症例目の治験参加者に対し、同種iPS細胞由来膵島細胞シート(OZTx-410)の移植を行いました。手術は無事に終了し術後の経過も良好であることから、既に退院されており、今後は定期的に外来での経過観察を行います。
本症例はOZTx-410を臨床に応用した初めてのケースになります。今回の医師主導治験は、OZTx-410移植に伴うヒトでの安全性を評価することが目的であり、第一症例目について術後1ヶ月までの安全性に大きな問題はないと判断されたため、今後は第二症例目の移植実施に向けた準備を進めてまいります。
(手術について)
実施場所:京都大学医学部附属病院
手術時期:2025年2月
術 者:肝胆膵・移植外科 穴澤貴行医師 他1名
(シート移植の流れ)
1)OZTx-410について
OZTx-410に使用されているiPICs注1)は、「T-CiRA」注2)での研究を経て見出された膵内分泌細胞集団であり、京都大学iPS細胞研究財団(CiRAF)で作製された「再生医療用iPS細胞ストック」注3)を膵島細胞に分化させたものです。本治験で使用するOZTx-410は、このiPICsを均等に分散した薄層のシート状製品としてオリヅルセラピューティクス株式会社が開発したものです。
手術予定日が決まった後に、治験製品提供者であるオリヅルセラピューティクス株式会社にOZTx-410の納入を依頼しました。手術前日に治験製品提供者から京都大学医学部附属病院分子細胞治療センター(CCMT)に温度を一定に保つことができる輸送装置に入れてOZTx-410が搬送され、手術当日にCCMTから京都大学医学部附属病院手術室まで運びました。
2)移植術の流れ
手術当日に全身麻酔を施し、腹部正中切開にて腹壁深部にアプローチしました。左右それぞれにシート挿入が可能なスペースを作りました。シート端を合成吸収性縫合糸を使用して固定し、複数枚のシートを移植しました。すべてのシートの移植が終了した後に、止血を確認し閉創しました。
(第一症例目の術後経過)
手術後は一定期間入院下で経過を観察しました。これまでOZTx-410による安全性の問題は認められておらず、術後1ヶ月までの経過についても安全性の観点から大きな問題はないことを本試験とは独立した第三者委員会にて判断いただきました。
(今後の予定)
本治験では、移植後の経過観察を最大5年間継続します。また、第一症例目の術後1ヶ月までの安全性に大きな問題はないことを確認したため、今後は第二症例目の移植実施に向けた準備を進めてまいります
(用語説明)
注1)iPICs:iPS 細胞由来膵島細胞(iPS cell-derived pancreatic islet cells)
注2)T-CiRA :京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業株式会社が2015年度から開始した共同研究プログラム
注3)多くの方に免疫拒絶を起こしにくい、特別な細胞の型(HLAホモ接合体)をもつ健康なドナーから作製したiPS細胞。
(治験実施体制)
治験責任医師:糖尿病・内分泌・栄養内科 教授 矢部 大介
実施診療科:糖尿病・内分泌・栄養内科、肝胆膵・移植外科(移植手術)
iPS細胞の提供:京都大学iPS細胞研究財団
治験製品(OZTx-410)提供:オリヅルセラピューティクス株式会社
試験概要:https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2053240146
(本治験の支援)
本治験は、下記機関の支援を受けて実施されます。
・国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
橋渡し研究プログラム シーズF「iPS細胞由来膵島細胞を用いた1型糖尿病に対する細胞治療開発」
(代表:オリヅルセラピューティクス株式会社 伊藤 亮、橋渡し研究支援機関:京都大学)
・オリヅルセラピューティクス株式会社
(本件問合せ先)
ipics※kuhp.kyoto-u.ac.jp
※を@に変更してください。
上記アドレスは、医師・報道機関からの問合せのみに対応しております。
(一般の方からの問合せ先)
京都大学医学部附属病院 臨床研究相談窓口
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
下記のHPにあるフォームからお問い合わせください。
※「iPS細胞由来膵島細胞シート」など、本試験に関するご質問であることが分かるようご記載ください。
https://iact.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/consultation