2024年3月8日
京都大学医学部附属病院
株式会社NTTデータ
【背景】
治験では、治験実施計画書にて厳密に定められた実施手順に則して、臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator、以下CRC)(注5)により外来受診日や薬剤投与、検査等のスケジュール管理が行われ、その診療結果を原資料であるカルテに医師が記載し、CRCが手作業で症例報告書(Clinical Report Form、以下CRF) (注6)やEDCに転記・入力する作業が行われます。CRFやEDCに手作業で入力された情報は、製薬企業が原資料であるカルテとの照合・検証作業を行うことで品質を管理しています。
このような作業により、1つの治療薬が薬事承認されるまでに莫大な時間とコストが必要となり、最終的に医薬品の高価格化の要因となっています。
このような現状から、治験業務の品質確保と効率化が重要な課題となっており、京都大学病院とNTTデータは2020年より、治験支援システムに関して、病院内に記録されたデータから治験参加候補者を抽出する機能や、治験のスケジュール管理機能等に関する共同研究を実施してきました。2023年度には、京都大学病院が実施する医師主導治験にて、治験支援システムのスケジュール管理機能の評価を行っており、このたび新しくeSource連携の分野で実証を行いました。
【実証について】
目的: | IT技術を駆使することによる治験業務の品質確保と効率化の実現 |
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概要 | 病院内で記録された診療情報をeSourceとしてEDCへ電磁的に連携するための、連携項目の精査および医師主導治験の治験実施計画を用いたフィジビリティの評価 |
実施内容 |
1.治験支援システムにおいて、病院内で記録された対象患者のデータを収集し、CDISC標準(注7)の 形式に変換した上でEDCへ連携するためのデータを出力(図1参照) 2.一連のプロセスを通した、医師主導治験への汎用的な適用可能性やCRCの業務効率性の評価 |
対象: | 京都大学病院が実施する医師主導治験(NOBEL-ioPDT試験)の研究対象者における診療データ |
実証期間: | 2023年10月から2024年2月まで |
主な役割: |
<京都大学医学部附属病院> ・本実証に用いる治験計画書および登録情報の提供 ・本実証に用いる治験に関する業務手順に関する情報の提供 ・アプリケーションソフトウエアの利用に必要となる施設内の環境整備 <NTTデータ> ・治験支援システム(業務アプリケーション)提供 ・各種設定、プログラム改修等 |
実証観点: |
治験支援システムについて、下記の点に対する評価を行う。 ・医師主導治験でのシステム適用可能性の評価 -ユーザビリティ(システム操作性、業務運用性の確認 等) -業務効率性(連携項目数の確認、作業時間の比較 等) |
【実証結果】
京都大学病院とNTTデータは、電子カルテから収集したCyberOncology®システム(注8)の臨床データを、eSourceとしてCDISC標準の形式に変換した上でEDC連携用データとして出力する機能を有した治験支援システムを院内に構築し、本システムを用いて医師主導治験(NOBEL-ioPDT試験)の対象患者データをCyberOncology®システムから取得し、EDC連携用のデータを作成することに成功しました。
今回作成したEDC連携用のデータは、治験支援システムで連携可能とするデータ項目のうちNOBEL-ioPDT試験におけるEDC登録項目の約72%をカバーすることが出来ており、CRCが行うカルテ確認やEDC登録における手入力時間が大幅に削減されました。本検証に参加したCRCからは、手作業によるエラーの削減や作業時間の短縮など、データ品質向上や業務改善を感じ取ったとの肯定的な評価を得ています。一方、連携データの更なるカバー率の向上を求める声もありました。
本検証を通じてユーザビリティや業務効率性を確認することができ、医師主導治験においても本システムを利用可能であるとの評価に至りました。今後、製薬企業が行う治験に本システムを利用する場合、eSource連携によりデータの一貫性と正確性が向上するためEDCへ連携されたデータは製薬企業によるカルテの直接確認(Source Date Verification:以下SDV)(注9)が不要となり、その稼働も削減されることが見込まれます。
【今後について】
京都大学病院およびNTTデータは、電子カルテやCyberOncology®システム等の院内データの積極的活用による治験業務の効率化を促進するとともに治験全体の質の向上を図り、将来的には治験期間の短縮・コスト削減・治療薬の早期承認の実現を目指します。更なる院内データの利用拡大を目指した取り組みを行うとともに、将来は本実証で得られた成果を本邦のさまざまな治験に展開を図り、日本の医療開発への貢献を目指します。
【本件に関する報道関係者からのお問い合わせ先】
■京都大学医学部附属病院について
京都大学医学部附属病院は、大学病院の使命である「診療・研究・教育」に関する3つの基本理念「患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する」「新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する」「専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する」をベースに、「安心・安全な医療の提供」に努めています。
URL:https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/
■株式会社NTTデータについて
NTTデータは、豊かで調和のとれた社会づくりを目指し、世界50カ国以上でITサービスを提供しています。デジタル技術を活用したビジネス変革や社会課題の解決に向けて、お客さまとともに未来を見つめ、コンサルティングからシステムづくり、システムの運用に至るまで、さまざまなサービスを提供します。
URL:https://www.nttdata.com/jp/ja/